2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23520230
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
中尾 友香梨 佐賀大学, 文化教育学部, 准教授 (10441734)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 琴学 / 琴楽 / 七絃琴 / 日中比較文化 / 日中文化交流史 / 音楽交流史 / 思想史 / 江戸時代 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究期間の最終年度にあたる今年度においては、「近世琴人データベース」を完成させ、本研究テーマに関する論文を一篇発表し、資料集『江戸時代の琴詩集』と『江戸時代の琴文集』を刊行した。 本研究は近世日本における中国琴楽の受容について分析したものである。平安期の琴文化については、比較的に研究が進められ、研究成果もある程度まとまりつつあるが、近世期の琴文化についてはまだ活発な研究が行われていない。岸邉成雄『江戸時代の琴士物語』(有隣堂、2000年)などいくつかの優れた先行研究もあるが、その数はきわめて少なく、まだ多くの課題が取り残されている。 このような状況を踏まえて、本研究ではまず近世日本の琴文化に関する基礎資料として、「近世琴人データベース」の構築と『江戸時代の琴詩集』『江戸時代の琴文集』の編纂を目指し、これを実現した。なお、近世日本における琴文化の再興の過程を分析することにより、当時の知識階級による「雅俗」認識及び「中華思想」に対するイデオロギーについて分析を加えた。その結果、江戸時代には琴を嗜んだ人物が多かったが、東皐心越の伝えた明代琴楽に対する彼らの認識と受容態度は必ずしも一様ではなく、それは各人の生きた時代の潮流及び彼らが信奉した学問・思想体系と密接に関わっていたことが明らかになった。 従来、日中比較文化といえば概ね文学または思想史の研究に偏りがちであったが、本研究では「琴楽」のカテゴリを通してこの問題を捉え直した。日本における中国文化の影響を考える際、「琴楽」はきわめて重要な要素の一つである。「琴楽」は単に「音楽」の領域に属するものではなく、思想史や文学とも不可分の関係にあるからである。本研究により日中比較文化または日中文化交流史の新たな一面が浮き彫りになったことを確信する。
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