2012 Fiscal Year Research-status Report
室町文化史料としての古往来とその作者・享受層に関する研究
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23520239
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
小川 剛生 慶應義塾大学, 文学部, 准教授 (30295117)
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Keywords | 尺素往来 / 新札往来 / 橋本公夏 / 古往来 |
Research Abstract |
研究計画の第2年度である。以下の研究を実施した。1.三好市立図書館・東京大学文学部国語学研究室・金沢市立玉川図書館・北海学園大学附属図書館北駕文庫・鍋島報效会 徴古館以下、国内の所蔵機関に赴いて、尺素往来および関係する文献の書誌調査を実施した。これによって主要な伝本を実際に手に取って、その書誌的情報を整理し、伝本研究のための基礎とすることができた。また、室町末期古写本、江戸初期の写本は、いずれもそれ自体が書き入れ・訓点・異本校合などに興味深い内容を持ち、当時の学問史の一端を垣間見ることができる。2.尊経閣文庫・国文学研究資料館などから紙焼き写真ほか複製を購入し、座右に備えて参看することで、研究上の知見を得た。3.尺素往来の注釈作業を進めるとともに、それによって明らかになった同書の史料的価値について、2012年9月9日の研究会「三人会」(於慶應義塾大学文学部)にて発表した。4.最古写本にして最善本である国立公文書館内閣文庫蔵、橋本公夏(1454-1538)筆本の研究を進め、公夏が書写した古典籍に関する研究を進めた。永正13年(1516)に書写した古今和歌集一帖(鍋島報效会 徴古館)を新たに調査することができたのは成果であった。5.尺素往来や往来物の研究についての序論として、「三百年の孤独」(リポート笠間53 2012年11月)を執筆した。6.尺素往来・庭訓往来・新札往来の研究書・注釈書、ならびに室町時代文化についての史料集・研究書を購入した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度の実施状況報告書に詳しく記したように、現在では、尺素往来の書誌的調査を進め、かつその原形的位置にある新札往来についても南北朝期書写の伝本を整理している段階である。そして、このことで未解決部分の多かった新札・尺素の両往来の成立についてはほぼ明らかにし得た。参照すべき周辺の史料も集積されている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度が研究の最終年度である。そこでまずは、これまでの研究成果を基礎として、「尺素往来の成立」と題した論文を執筆、公刊することを目標としたい。これまで行ってきた伝本研究によって、その原態を伝える伝本と増補改編された伝本とを峻別することができたので、まずはそのことを整理して記すことが重要である。 その後は、注釈作業をできるかぎり進めて、公刊の準備に入ることになる。索引などを充実して、室町文化史の手引きとなるような形式を目指すことになる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費の使用計画については、研究計画書に記した内容と大きな変更点はない。
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