2013 Fiscal Year Annual Research Report
室町文化史料としての古往来とその作者・享受層に関する研究
Project/Area Number |
23520239
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
小川 剛生 慶應義塾大学, 文学部, 准教授 (30295117)
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Keywords | 尺素往来 / 新札往来 / 一条兼良 / 足利義持 / 室町文化 |
Research Abstract |
最終年度に実施した研究内容と成果は以下の通りである。まずは国内の図書館・文庫における、尺素往来の伝本の書誌調査を完了した。写本は25本に及び、新出の伝本も見出すことができた。とくに東京大学史料編纂所蔵徳大寺本、福岡市博物館蔵天文13年写本、センチュリー文化財団蔵本は、いずれも室町末期の古写本であり、本文研究上多大な意義を有するものである。版本は二種で、慶安4年(1651)版本が先行し、無刊記版本は後出であることを指摘した。また龍門文庫本(2本)、謙堂文庫旧蔵東書文庫本(阿波国文庫本の青焼写真版)など、これまで存在は知られていながら、十分活用されていなかった伝本も調査した。前年度までの調査結果もあわせて、伝本研究に着手し、多様な伝本は二類四系統に分類されることを明らかにした。また内閣文庫蔵橋本公夏筆本ほか三本の内容がもっとも古態をとどめていることも判明し、その本文をもとにして、本書の成立は応永30年(1423)前後であり、将軍足利義持・義量父子を意識して執筆されたことを推定した。これらの結果は、「尺素往来の伝本と成立年代」にまとめた。本年5月に刊行される(『池田利夫先生追悼論文集』笠間書院)。さらにこの成果を踏まえた尺素往来の注釈および新札往来の本文については、すでに刊行されることが決定しており、その準備にかかっている。主要な調査先と日程は以下の通りである。7/29高野辰之記念館(長野県信州中野市)、8/10・1/10東京大学史料編纂所、12/5静嘉堂文庫調査、12/7成簣堂文庫調査、1/14福岡市博物館、1/29東書文庫、1/10,2/10内閣文庫、3/12荏川文庫(新潟県佐渡市)、3/20尊経閣文庫、3/28龍門文庫。さらに尊経閣文庫・東京大学史料編纂所・内閣文庫・九州大学人文科学系合同図書館・センチュリー文化財団などから古写本の紙焼き写真を購入した。
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