2013 Fiscal Year Annual Research Report
真言密教寺院の所蔵文献と近世前中期の説話文学に関する研究―地蔵寺を中心として
Project/Area Number |
23520246
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
山崎 淳 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (20467517)
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Keywords | 国文学 / 真言密教 / 寺院所蔵文献 / 近世 / 説話 / 仏教文学 |
Research Abstract |
1、本研究の基本となるのは、地蔵寺(大阪府河内長野市)所蔵文献の調査である。所蔵文献の核となっているのは、同寺開山・蓮体(1663~1726)の所持本である。前々年度、前年度に引き続き、原則として箱番号の順に全所蔵文献の書誌を記録する悉皆調査を行い、その結果をデータベース化する作業を進めた。ただし、蓮体(及び師の浄厳)の著作が集中する第19、20箱や、特に重要と判断した資料については箱順にこだわらず調査した。書誌調査を含め、各文献を精査することにより、古さや規模において他の寺院に必ずしも突出しているわけではない同寺に、質・量とも充実した文献が存在していることが明らかになってきた。 2、調査の成果の一部は、『上方文藝研究』10号において学術論文として発表した。本論文では、地蔵寺蔵『本朝孝子伝』(藤井懶斎著・整版本)を分析することで、当該本の諸版中における位置付けを試みた。本論文により、ある作品の本文・流布・出版について、研究を進展させる可能性を持つ文献(版本)が寺院から見出されたことを指摘できた。それゆえ、地蔵寺所蔵文献にはさらなる価値が加わったと言える。なお、地蔵寺所蔵文献の中には、上記のような可能性を持つと推察されるものがいくつか存在する。今後の研究に新たな指標が提示されたことにもなる。 3、蓮体の著作に関しては、地蔵菩薩霊験説話集『礦石集』を取り上げ、平成25年度仏教文学大会において発表した。本発表により、近世の仏教説話集、及び収録される個々の説話の成立を考える上で、寺院所蔵文献の存在がきわめて重要であることが提示できた。なお、この成果の一部は平成26年度に論文化される予定である。
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