2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23520262
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
増田 周子 関西大学, 文学部, 教授 (30294664)
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Keywords | 戦争 / 記録 / 表象 / 火野葦平 / アメリカ / 中国 / 怪異小説 / 国際研究者交流 |
Research Abstract |
本年は、科学研究費を使用し、平成24年9月には、関西大学東西学術研究所と連携して、国際シンポジウム「戦争の記録と表象ー日本・アジア・ヨーロッパー」を、関西大学で開催した。韓国慶尚大学校から3名、国内から4名のゲストスピーカ―を招聘し、若手研究者も含め17名の発表者が、戦争の記録と表象の問題を発表し、国際的な交流を深めた。申請者は、火野葦平の兵隊三部作の代表作「土と兵隊」をとりあげ、記録資料である「江南戦記」「従軍手帳」「創作ノート」と作品との関係を論じた。また、同時に関西大学附属図書館で、「戦争の記録と表象ー日本・アジア・ヨーロッパー 火野葦平の軌跡展」を開催し、広く市民や学生に火野葦平の記録資料や自筆資料を公開した。本シンポジウムの成果は、2013年3月に『戦争の記録と表象ー日本・アジア・ヨーロッパー』(関西大学出版部)として刊行された。また、図書館での展示図録『戦争の記録と表象ー日本・アジア・ヨーロッパー火野葦平の軌跡展』(2013年3月、関西大学東西学術研究所)として発刊された。 さらに、申請者は、1958年に米国務省の招待で火野葦平が訪れた、アメリカについての研究を進めた。特に、米コロンビア大学所蔵の、未発表のキーン氏宛ての火野葦平書簡を取り寄せて、1958年10月のドナルド・キーン氏と火野葦平との交流研究をし、論文としてまとめた。 一方、昨年から続けている火野葦平の怪異小説研究をおこなった。第一に、火野葦平の「恋と牡丹」と『葛布』との比較研究をおこない、日本比較文学会関西支部例会にて口頭発表をした。また、火野の河童作品をとりあげ、関西大学東西学術研究所の例会で発表し、漫画家の水木しげるへの影響関係を論じた。最後に、国際芥川龍之介学会で、火野葦平の「女賊の怨霊」をとりあげ、火野文学と芥川龍之介との関係について研究をすすめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年は、科学研究費を使用し、平成24年9月には、関西大学東西学術研究所と連携して、国際シンポジウム「戦争の記録と表象ー日本・アジア・ヨーロッパー」を、関西大学で開催し、『戦争の記録と表象ー日本・アジア・ヨーロッパー』(関西大学出版部)、展示図録『戦争の記録と表象ー日本・アジア・ヨーロッパー火野葦平の軌跡展』(関西大学東西学術研究所)を刊行し、広く国内外に研究の成果を発信するとともに、戦争の問題を共有し、交流を深めることができた。さらに、火野葦平とアメリカの研究、火野の河童小説群の研究にも着手することができた。いずれの研究も、昨年の研究をもとに、進展し、目に見える成果をあげているため、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年は、火野葦平の自筆資料『青春日記』(大正9年、10年、11年、12年)の刊行と、1955年『アジア日記』の3冊を刊行する。さらに、関西大学東西学術研究所から、『1955年 火野葦平アジアの旅』を出版する。また、平成25年度秋には、日本近代文学会全国大会で、火野葦平の戦争文学の口頭発表をおこなうことを予定している。また、昨年度口頭発表した研究を論文にすることを予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は、火野葦平資料館・国立国会図書館・日本近代文学館への出張、図書費、入力・資料整理のアルバイトなどに使用する。また、スキャナーや、録音器具などのオーディオ製品の購入にあてる。昨年度繰越金が生じたのは、予定していた学会発表が次年度になったことが理由である。
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