2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23520262
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
増田 周子 関西大学, 文学部, 教授 (30294664)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 火野葦平 / 広東 / 北京 / 武漢 / 河童 / 芥川龍之介 |
Outline of Annual Research Achievements |
H26年度は、1955年4月に、インドのデリーで開催された「アジア諸国会議」の後に火野が訪れた中国での見聞記をもとに研究を行い、2014年8月20日広東外国語大学にて開催された、中国文学研究会において、「一九五五年火野葦平新中国聞記ー広州・武漢・北京を中心としてー」と題して、基調講演をおこなった。1955年当時の、広東、武漢、北京の様子が全く異なることも、研究の中でわかった。全体主義的な方向に進みつつある緊迫した中国の当時の様子が、火野の見聞記から伝わり、それらを含めて発表をおこなった。講演後はは広東地域のフィールド調査をおこない、日中両国の研究者とディスカッションをした。研究が前進し、大変意義深かった。さらに、昨年発表した、火野の芥川龍之介関係の研究をすすめることができた。芥川文学は火野にとってかけがえのないものである。 火野文学にとって河童という謎の妖怪は大変重要なモチーフである。火野は、河童小説や童話作品を四十篇以上描いている。その中で、日本各地に伝わる河童の「手」をもとにした、火野の「手」という作品について詳細に研究した。公職追放中に描かれた作品でもあり、戦争に対して、後悔する作者の心理が河童に託されて濃厚に出ていることを考察した。また、火野の「手」という作品をもとに描いた、水木しげる「河童の手」という作品についても考察し、火野の「手」と水木の「河童の手」を比較対照し、それぞれの作家の独自性や特色を論じた。
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