2012 Fiscal Year Research-status Report
平安期における文学と美術の相互関係―文献と文献に近似する現存美術作品からの探求―
Project/Area Number |
23520263
|
Research Institution | Shitennoji University |
Principal Investigator |
田島 智子 四天王寺大学, 人文社会学部, 教授 (80268474)
|
Keywords | 文学作品の美術関連記述 / 歴史資料の美術関連記述 / 年中行事の絵画化 |
Research Abstract |
(1)文献の収集整理について…823項目をエクセルでコンピュータ入力を行うことができた。 ①〈文学作品の収集整理〉以下の作品について、美術に関する記述を収集してエクセルでコンピュータ入力した。これらのデータから、平安時代の人々が文学作品に取り上げるに値するとみなした絵画や絵画的な光景が、おおよそ判明してきた。【作り物語など】夜寝覚物語・わが身にたどる姫君・松陰中納言・栄華物語・連歌論集・室町物語草子集【説話】撰集抄【芸能】謡曲集・狂言集・能楽論集【漢詩文】本朝文粋 ②〈歴史資料の収集整理〉以下の作品について同じくコンピュータ入力した。これらのデータから、平安時代の人々の生活実態に即した絵画や絵画的光景が、おおよそ判明してきた。【歴史】日本書紀・風土記・政治要略・朝野群載・平安遺文・殿暦・民経記・経俊卿記・明月記(巻一)・建内記・猪隈関白記・岡屋関白記・愚昧記・御産部類記・九条家歴世記録・仙洞御移徒部類記・大日本古文書【故実書】禁秘抄・類聚雑要抄・安政御造営記・鳳見鳳闕図説・大内裏図考証(上)【叢書】故事類苑文学部絵画 (2)美術作品の収集整理について…図書を対象に、屏風歌の題材となった絵に近い画像や、文学と美術の相互関係を知る上で有用な画像を調査し、スキャナーを用いてコンピュータに取り込みつつある。 ①〈絵画資料〉源氏物語絵巻・寝覚物語絵巻・年中行事絵巻・法然上人絵伝(上)②〈工芸品等〉正倉院御物 (3)先行研究の調査収集について…屏風歌の題材となった年中行事のうち、以下の先行研究を入手した。〈年中行事〉七夕・八月十五夜・盂蘭盆会・駒牽・相撲節会・亥子餅・月次祭・大嘗祭・追儺
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(1)文献の収集整理について…①〈文学作品の収集整理〉平成24年度でほぼ調査・入力は終えた。今後少々の拾遺は必要だが、平成24年度で達成できたと言える。②〈歴史資料の収集整理〉平成23年度から前倒しで着手した。平成24年度は引き続き本格的に調査とデータ入力を行った結果、予定通り7割程度の収集・整理を達成することができた。ただし、予定以上の時間を費やすことになった。その原因は、該当箇所を探し出すことに手間取ったこと、漢文体であるため入力にかなりの時間を要したこと、データ入力を依頼した研究協力者が学部生であったため、漢文体の入力に際して細かい指示が必要だったことにある。 (2)美術作品の収集整理について…平成24年度より、予定通り画像の取り込みを開始した。しかし、取り込んだ上で整理ができたのは、今年度めざした分量の3割程度であり、遅れている。各美術館の刊行物や展覧会の図録も未入手である。遅れた原因の一つは、(1)②の歴史資料の収集整理に予定以上の時間を費やしてしまったことにある。もう一つの原因は、スキャナーで取り込んだ後の画像処理が複雑だったことにある。たとえば、分断して取り込んだ画像の合成や、鮮明に取り込めなかった部分の処理には、画像処理ソフトを用いなければならないのだが、画像処理ソフトに不慣れだったため、対応にかなりの時間を費やしてしまった。 (3)美術作品と文学作品との照合について…まったく達成できなかった。(2)の美術作品の収集整理が遅れ、照合するための資料が揃わなかったためである。 (4)先行研究の調査収集について…年中行事関連の先行研究については、収集し終えており、ほぼ達成できた。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)文献の収集整理について…①〈文学作品の収集整理〉調査・入力はほぼ終えた。平成25年度中に、データを景物毎・年中行事毎に分類し、美術作品の資料と照合できる形にしていく。②〈歴史資料の収集整理〉当時の美術(とくに絵画)の実態を知るため、歴史資料に現れた美術に関する記述を収集する。すでに全体の7割をコンピュータ入力しており、平成25年度は残り3割を調査し入力することを目指す。 (2)美術作品の収集整理について…文学に出てくる題材を描いた場面を、現存する絵画・工芸品から探し出す。調査対象は刊行された図書を中心に行う。刊行された図書とは、本研究者がすでに所持する美術関連の図書、本研究者が所属する図書館が所蔵する美術関連の図書、未入手の美術関連の図書・各美術館の刊行物や展覧会の図録である。それらの図書から探し出した図版は、スキャナーで取り込み、適切な画像になるよう画像処理ソフトで整え、題材ごとに整理する。平成24年度はほとんど進められなかったため、平成25年度はこの項目にもっとも比重を置いて研究を進める。 (3)美術作品と文学作品との照合について…(2)「美術作品の収集整理」がある程度進み次第、照合を開始する。(2)と(3)を並行して行うことになるが、その方が適宜フィードバックすることができ、より効率的に進められると考えるためである。 (4)先行研究の調査…引き続き、関連する先行研究を適宜調査し入手する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1)平成24年度分交付額の繰越金について…平成24年度は、交付金のうち946,232円を残す結果となった。その原因は、主として美術関連の図書購入が予定通り進まなかったことによる。この繰越金は平成25年度に使用する。 (2)平成23年度繰越金・平成24年度研究費のおもな使用計画…下記の二点について重点的に使用していく。 ①入力作業に携わる研究協力者への謝礼…平成24年度に引き続き、歴史資料の美術に関する記述を、エクセルで入力する。入力すべき該当箇所を歴史資料から探し出すのは、研究代表者である。入力作業を行うのは研究協力者である。研究代表者の指示と監督の下で行う。研究協力者として依頼するのは、研究代表者が所属する日本学科(旧言語文化学科日本語日本文化専攻)の卒業生1名である。漢文体で書かれている歴史資料の入力にはある程度の知識が必要であるが、依頼する卒業生1名はその任に堪える人材である。 ②美術関連の図書の購入…文学作品・歴史資料の美術に関する記述と対応する絵画や工芸品を、現存美術作品を探し出す。そのための調査資料として、各美術館の刊行物や展覧会の図録も含めて、美術関連の図書を購入する。すでに絶版となっていること図書もあり、古書として購入する場合もありうる。現在ほとんど未購入であるため、平成25年度の研究費は、とくに美術関連の図書の購入に充てる予定である。 ③その他…調査旅行、コンピュータ関連の雑費などに、使用する予定である。
|