2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23520266
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐野 宏 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 准教授 (50352224)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺島 修一 武庫川女子大学, 文学部, 教授 (60290409)
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Keywords | 万葉集 / 字余り / 定型 / 表記 / 次点本 / 新点本 |
Research Abstract |
今年度は、類聚古集をはじめとした次点期諸本の字余り句分布の精査を行った。東日本大震災の影響による初動の遅れを取り戻すべく、作業効率を優先して類聚古集を底本としてそこに異同を書き込む方法を採用したため、今一度、作成データを原本と対照し精査する必要があったからである。元暦校本については類聚古集と同様に別提訓の部分を抽出し、書写年代を勘案して巻毎に分析する形をとった。本文異同を含めてなお問題があるものの、やはりA群B群の分布傾向が認められた。現行諸本では脱落形とするものを語原形にする形の字余り句がある一方で、散発的に語原形を脱落形にする形で非字余り句となっているものが認められ、結果的に分布としては相殺されてA群B群の分布がより鮮明になるという構図である。その上で西本願寺本をはじめとして新点諸本の字余り句の分布調査を行った。とくに新点諸本では短歌第二句・第四句のB群での字余り句が増加するように思われ、A群B群の分布傾向が動揺している。その要因分析のために一字一音式の仮名主体表記歌巻での字余り句分布を訓字主体表記歌巻と照合させた、次点期諸本に比べて新点期諸本は仮名書きとの強い相関が観察される。aグループ(第一・三・五句)及びA群に母音音節を含むと字余り句になりやすいという傾向はいずれの諸本でも維持されている。諸本を観察する限りでは、訓詁の方法として仮名書きを参照する形で改訓加点された結果、A群B群の分布傾向はB群が崩壊する形――すなわち、bグループもしくはB群での字余り句の増加する形で動揺すると考えられる。次点期諸本と新点諸本の相互関係についてはなお分析を必要とするが、概ね当初の予測が確認できたものと考える。
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