2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23520270
|
Research Institution | Kobe City College of Technology |
Principal Investigator |
土居 文人 神戸市立工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (20300600)
|
Keywords | 語源研究史 / 辞書史 / 文化史 |
Research Abstract |
日本で最初に出版された和語の総合的語源辞書である松永貞徳『和句解』(1662年刊)の研究と、近世に執筆・出版された語源研究書・語源辞書のリスト作成を行った。『和句解』については、見出し語が近世初期に出版された易林本系の節用集から和語を抄出して立項したものであることを証明した。この節用集は、横本『二躰節用集』のグループに属する節用集に、易林本または草書本(寿閑本も含まれる可能性がある)節用集から語彙を補足した現存しない節用集である可能性が高い。また、『和句解』の語源説は、吉田神道家の語源説(おそらく、吉田兼倶の創作した語源説)が多く取り込まれていることを、清原宣賢〈後抄本〉『日本書紀抄』所載の語源説との比較から証明した。そして、「日常用語を含めた和語を網羅的に収集して見出し語として立項し、和文の語釈(語源説)を記す」記述形式が、中世の辞書と歌学書の記述形式の総合であることを指摘した。近世の語源研究については、『和句解』などに掲載されている近世初期の語源説が、貝原益軒『日本釈名』(1700年刊)などを経由して定説化し、近代の『大言海』に影響を残したことを指摘した。平成25年度は、『和句解』の「見出し語索引」「翻刻」「語源説に援用された知識の注釈」「解説」「本文語句索引」を完成させた。また、「中世・近世の語源説掲載主要文献一覧」の作成を行った。これらの過程で、東京大学総合図書館蔵『和句解』など、翻刻の底本を決定するための出張調査を実施した。なお、これらの成果は、著書『語源辞書 松永貞徳『和句解』本文と研究』として、平成26年以降、和泉書院から出版されることが決定している。本研究によって、日本の文化史・辞書史における語源研究の意義の一端が明らかになった。なお、平成25年に実施した、宮津市立前尾記念文庫での資料調査で、『名語記』の紙焼き写真本(巻二~巻十)を発見した。
|