2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23520272
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Research Institution | National Institute of Japanese Literature |
Principal Investigator |
中村 康夫 国文学研究資料館, 研究部, 教授 (60144680)
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Keywords | 栄花物語 / 本文 / 抄出本 / 北村季吟 / 絵入版本 / 学習院本栄花物語 / 古い形 / 本文の価値 |
Research Abstract |
研究代表者中村康夫は『栄花物語』絵入抄出版本とそれと同じ本文を持つ架蔵の写本との関係を調査・追求する中から、『栄花物語』絵入抄出版本がいつごろ、誰によって、なぜ、どのように刊行されたかを総合的に考えている。その研究が真摯な意味を持つことは、『栄花物語』絵入抄出版本と架蔵の写本とが文字がそっくりであること、架蔵の写本に「季吟しるす」の識語があること、松村博司氏推定の『栄花物語』絵入抄出版本刊行年次と北村季吟の活躍期との関係など、それぞれに密接に絡んでくることから生まれる。さらに、『栄花物語』絵入抄出版本と架蔵の写本との間の異同を逐一考察すると、写本が先にあって、しかる後に絵入版本が生まれたと考えるのが自然であるという結論に達すること、さらには、雲英末雄氏が、季吟は自らの古典注釈書の版下を作成するに当たり自ら染筆しているとの指摘なども総合的に考えると、北村季吟その人が、フルサイズの『栄花物語』から本文を抄出し、わかりやすく世の中に提供するため、挿絵を入れて絵入『源氏物語』の体裁に寄せて刊行に及んだと推定される。この間の細かな実証作業のために、この3年間を費やし、特にこの一年はその総仕上げをして学会発表を行い、国文学研究資料館において展示をも行った。また、論文も作成し、投稿しているが、その採否は今後のことである。 研究協力者の中村成里は学習院本の『栄花物語』につき、その本文が現在まで高く評価されてきた『栄花物語』の本文より古い形を持つものであることを指摘し、その価値を追求して、価値が固まれば、研究資料の提供や『栄花物語』の読み方の提案など、具体的な出版へと進むべく、さまざまな調査・研究を続けてきた。この3年は視野を広げるという観点からの古筆切との関係等拡張的取り組みが入ったが、考察は確実に深まっている。なお、いまだ、価値の確定には至っていない。論文は2編発表している。
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