2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23520280
|
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
中村 隆 山形大学, 人文学部, 教授 (00207888)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | ホガース |
Research Abstract |
ホガースにおける「理神論」受容の解明をした。具体的に以下の3つのことをした。(1)理神論の先駆けとなったウルストン(Thomas Woolston)の『我らの救済者の奇跡についての議論』(Discourses on the Miracle of Our Saviour, 1729)のテクスト分析をした。(2)18世紀前半の英国の新聞記事(the Spectator)などを参照することにより、ウルストンの『我らの救済者の奇跡についての議論』が同時代の人々にどのような影響を与え、反響を喚起したのか調査し、英国の「理神論」関連の記事内容について分析を加えた。(3)『我らの救済者の奇跡についての議論』は、新約聖書におけるイエスの奇跡を根底から否定したために「不敬罪」に問われたが、その経緯について精査した。ホガースの「不敬罪」的な図版として、6枚の連作版画である『娼婦一代記』を取り上げ、そこに英国国教批判があることを指摘した。特に第1図において、ホガースがウルストン的「理神論」をを取り込みつつ、キリスト教批判を隠蔽しながら、埋め込んでいることを分析した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
18世紀の新聞記事の収集にやや遅れているが、それ以外の文献は予定通り、収集に成功している。ウルストンのDiscourses on the Miracle of Our Saviour,1729)については、研究メモを作成し、重要事項の整理をした。ホガースについての先行研究も相当の補強ができ、先行研究において、ホガースと理神論の関係が比較的手薄な研究分野であることが確認できた。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)1723年にアンダーソン(James Anderson)によって、『フリーメーソン規約』(the Constitutions, 1723)が作られる。これはフリーメーソンの綱領であり、この結社(団体)の本質を知る上で重要な文書である。フリーメーソンは、建築学と深く結びついていたために「ユークリッド幾何学」を組織の理論的支柱とするなど、独特な思想を持っていた。フリーメーソンの思想的基盤を解明するために、『フリーメーソン規約』を精読し、その意味内容を整理する。(2)18世紀前半の英国の新聞記事などを参照することにより、『フリーメーソン規約』が同時代の人々にどのような影響を与え、反響を喚起したのか精査する。これについては、ポールソン(Hogarth I-III [1991-93])とハレット(The Spectacle of Difference: Graphic Satire in the Age of Hogarth [1999])の先行研究が一部解明しているが、そこで得られた知見を整理した上で、さらなる新しい知見を盛り込むことを目標とする。(3)フリーメーソン受容の痕跡が見られるホガースの図版に対して、精密な図像解析を施すことで、ホガースが「フリーメーソン」をどのような形で、自己の作品の中に取り込んでいたのかについて考察を進める。「フリーメーソン」との関連で分析する対象として、『放蕩息子一代記』の8枚の連作版画を予定している。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1)フリーメーソンの綱領である『フリーメーソン規約』(the Constitutions,1723)関連の論文および研究書の入手。フリーメーソンと建築学の関連を論じた論文および研究書の入手のために使われる。(2)フリーメーソン規約』の影響を知るために、18世紀前半の英国の新聞記事などを所収するマイクロフィルムが必要になるが、その購入経費。(3)ホガースの『放蕩息子一代記』関連の論文および研究書の入手のために使われる。
|