2011 Fiscal Year Research-status Report
スティグマの切離・逸脱者の正常化:米国社会と文学に見る「奇形の男性性」表象
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23520289
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
久保 拓也 金沢大学, 学校教育系, 准教授 (80303246)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | アメリカ文学研究 / マーク・トウェイン / ジェンダー研究 / 男性学 / 障害学 / 戦争 |
Research Abstract |
平成23年度は、この研究の新たな基盤となる、「障害学」の基礎的文献の収集と精査、および、中心となる作家、およびその周辺の社会状況等についての文献の収集と精査が中心となった。それにより、「障害」が表象する文化的事象が、戦争という特殊状況においてのみならず、重要な機能を示すことを確かめた。いわゆる社会的な弱者(あるいは、「マイノリティ」)と表現される人々に寄せられる視線と、その対象とともに考察していくことは、「男性学」が最近の重要事項として考察し続けている「多様な男性性 (masculinities)研究」、という観点と多くの共通点をもつ。当研究代表者は、男性学の観点からの文学研究が、現実の社会において実際的な影響力を持つことを重視して研究を続けているが、その観点に障害学の観点を加えることの必要性と重要性が明確に示される研究を継続する。 予定していた研究成果の発表は、金沢大学で平成24年3月13日に行われた、金沢大学大学院ジェンダープログラム開設記念シンポジウムでのこととなった。この発表は、この研究の中心となる作家であるマーク・トウェインがその文学的キャリアの最初期に執筆した短編小説に焦点を置き、「戦争」、「障害」、そして「男性性」の三つの要素が、いかに作家の想像力の源泉となっているのかを詳説した。現在、この研究発表から議論を発展させた論文を執筆中で、学術雑誌への投稿を予定されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予定していた海外での活動が平成24年度に延期され、研究成果の発表回数を減らすこととなった。その結果予定してた成果発表も遅れ、予算執行も当初の予定より遅くなっている。そのため、23年度の研究については「やや遅れている」という判断をするに至った。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度は予定通りに研究が遂行される。今年度は米国での研修が決定している。当然のことながら、当地での研究はこの科学研究費補助金により支援を受けている研究を大きく発展させる契機となる。既に国内で決定している複数の研究発表と論文発表に加えて、24年度後半から25年度前半は、米国で研究に集中することとなり、23年度に発生した遅れを取り返すのはもちろん、予定よりも進捗を大幅に速めることが可能になると考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は、研究継続のための資料収集と、成果発表のための出張に研究費を使用することとする。 具体的な計画としては、まず、国内外において利用可能な、文献収集のための支出が継続的に行われる。研究成果の発表のための支出として、既に決定している国内の二つの学会における研究発表のため出張、および、アメリカでの研究発表と文献収集のための出張に授与された研究費を使用する。
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