2011 Fiscal Year Research-status Report
変身するヒロインたち:英語圏文学における現代的女性像
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23520292
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
澤田 知香子 山梨大学, 教育人間科学部, 准教授 (00456493)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
戸田 由紀子 椙山女学園大学, 国際コミュニケーション学部, 准教授 (40367636)
原田 寛子 福岡工業大学, 社会環境学部, 助教 (70572767)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 英語圏現代文学 |
Research Abstract |
1 本研究の目的である英語圏文学における女性像の変遷を考察するため、研究代表者及び研究分担者は、各自、女性のイメージとテクストに関する批評資料の選定・整理を行った。これについて、7月と8月にミーティングを設け、それぞれの報告をもとに議論を行った。この活動の中で、主に様々な文化圏で試みられてきた原型的物語の現代的書き換えに注目してヒロインのイメージの変遷とそれをめぐる議論の発展を確認した。2 予定したとおり、日本英文学会大会、日本アメリカ文学会大会に加え、国内の児童文学関連学会のほか、国外では7月にオーストラリアの児童文学学会などで情報収集の場を開拓し、このあらたな開拓分野における批評の動向を把握することに努めた。また、9月に大英図書館における文献調査のほか、英国の書店を見てまわり、スコットランドのグラスゴー大学では当地の研究者と関連分野についての意見交換を行った。3 研究の核となる文学テクストの選定のため、英米に加えてオーストラリアやカナダなど広く英語圏のテクストを概観し、継続的に候補文献リストの情報を交換し合ったうえで検討を重ねた。 上記の資料選定・整理と中心テクストの検討を通して、本研究で扱おうとするテーマ「変身」の根本的な定義づけについて話し合いを進めてきた。また、研究の中心となる、言語と作者性、身体とパフォーマンス、性とジェンダーといった、女性の変身物語における重要ファクターの設定に従い、各自の分担について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1 英語圏文学における女性像の変遷を考察する中で、変身するヒロインたちそれぞれの変身の意味を明確にするという目的において、「なぜ変身するのか」というシンプル且つ大きな命題に対し、いくつかの重要なキーワードを見出すことができた。2 現代の文学テクストがどのように女性性というものをテーマ化、理論化しているか、そして今日的な女性像がどのように進化しているかということの検証については、特に原型的物語としてのおとぎ話研究の分野における重要な批評資料をレビューし、先行研究の流れをある程度把握することができた。3 オーストラリアの児童文学会への参加により、当該分野において現在ポピュラーに扱われている作品や批評方法に触れることができ、また、様々な新しいテクストや作家を知ることができた。英国の図書館や大学における調査でもこれまで見逃していた資料の発見があった。4 現代英語圏文学における新しい女性像を考えるうえで最も重要となる中心テクストについて、研究代表者、研究分担者がそれぞれまずはじめに扱うテクストを異なる文化圏(イギリス、アメリカ、オーストラリア)の作品の中から選び、決定することができた。各テクストの具体的考察について年度末にミーティングを設け、「女性の変身」と関わる重要テーマをそれぞれに設定し、今後の研究の方向性を確認することができた。5 平成24年8月にベルギーで開催が予定されているおとぎ話研究の学会FAIRY TALES VANGUARDでの発表を目指し、パネルのプロポーザルを送った。
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Strategy for Future Research Activity |
1 一次資料の研究と批評・理論研究について初年度の研究成果を基盤にし、引き続き各自が担当する文学テクストの分析・考察を進め、関連する批評・理論への理解を深めるという目的に照らし、研究代表者と研究分担者は定期的にミーティングを行い、それぞれの進捗状況を報告する。初回のミーティングまでに各自が分担する以外の中心テクストについても精読を終え、議論の内容を互いに検討する。2 研究成果の発表と教育現場での活動について(1) この平成24年度開催のベルギーでのおとぎ話研究に関する学会で、各自が選んだ中心テクストについて研究代表者と研究分担者全員が発表し、議論を招くためのパネル・プロポーザルをすでに学会運営事務室に送っているので、受諾された場合には、開催時期の8月後半まではその準備にあわせて研究を進める。学会参加後は、その場で得られた批判や意見を検討し、最終年度に向けた議論の修正・発展に役立てていく。(2) 学生に向けたセミナー・読書会の場を積極的に設け、テクスト考察の方法論の指導、ジェンダーや自己創造といったテーマでの議論に研究成果を活かすということについては、これまでどおり文学関連の授業で実践していく。特に、初年度に開拓した児童文学分野の新しいテクスト、それらに関連する視聴覚資料などをまず授業で活用する。こうしたマテリアルに対する学生のレスポンスを研究にフィードバックするため、研究ミーティングの際にはこの点についての情報・意見交換も行い、比較検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1 設備費: 初年度は研究代表者の研究活動における学会参加や本研究のためのミーティングを行うにあたって必要不可欠なパソコン(ポータブルなもの)などの購入が必要だったが、今年度においては設備費の使用計画はない。2 海外旅費及び国内旅費(1) 上述のベルギーにおける8月の国際学会のための出張費が主要な支出となる予定である。昨年度、大学業務とのスケジュール調整が難航し科研費による国内の出張申請が間に合わなかったため24年度に繰り越した分もこの海外出張に充てたい。また、当該学会については、現在申し込み中のパネル・プロポーザルが受け入れられた場合も受け入れられなかった場合も参加し、情報の収集を行う予定である。(2) 上記の国際学会に参加したうえで旅費にゆとりが生じた場合は、国内で定期的に行う予定にしている研究代表者と研究分担者のミーティング旅費を申請する予定である。3 消耗品費: 初年度に引き続き、消耗品費は研究図書購入に充てる。研究対象として選んだ著者作品とその関連テクストをはじめ、児童文学、ファンタジー文学、女性学といった関連分野の研究書で未入手のものを随時購入する予定である。また、研究成果を教育の現場に反映するという観点から、授業でも扱うことのできる児童文学(YA文学も含む)やファンタジー文学のテクストと、昨今ではそれらの舞台化や映画化作品もしばしば入手可能なので、そうした視聴覚マテリアルも必要に応じて購入する予定である。4 その他: 上述のベルギーでの学会のような国際学会においては参加費用が必要となる。初年度のオーストラリアでの学会のときと同様に、「その他」の費用はこれに充てる予定である。
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Research Products
(1 results)