2012 Fiscal Year Research-status Report
変身するヒロインたち:英語圏文学における現代的女性像
Project/Area Number |
23520292
|
Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
澤田 知香子 山梨大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (00456493)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
戸田 由紀子 椙山女学園大学, 国際コミュニケーション学部, 准教授 (40367636)
原田 寛子 福岡工業大学, 公私立大学の部局等, 助教 (70572767)
|
Keywords | 英語圏文学 |
Research Abstract |
1 本研究の目的である英語圏文学における女性像の変遷を考察するため、研究代表者及び研究分担者は、前年度に選定した重要な批評資料を揃え、検討した。また、同じく前年度に選定した一次テクストや中心に扱う作家に関わる資料の精読を進めた。こうした資料分析について、随時、研究代表者が意見・情報のとりまとめを行い、8月に本年度の中間報告とする形でミーティングを行った。また、研究分担者1名が研究休暇取得のためプロジェクトから外れることになり、今後の研究協力の方法確認も含め、本年度総括のための最終ミーティングを3月に行った。 2 予定したとおり、日本英文学会等の国内学会に加え、国外では8月にベルギーのゲントで開催されたおとぎ話研究の国際学会 Fairy Tales Vanguard に参加し、さまざまな国の研究者や現地で活躍する作家たちと意見・情報交換を行った。 3 具体的なテクスト精読を進めるにあたり、本研究課題の中心テーマである女性の「変身」の意味づけについて検討を続け、研究代表者及び研究分担者がそれぞれ独自のアプローチ(女性の語り手とそのイメージの変遷、女性の変身と母性及び母親像、おとぎ話の再話とジェンダー)により多角的な視点で考察していくことを確認した。 上記の活動について、研究代表者は研究分担者による成果発表について事後の確認と助言を行い、分析した資料や参加した学会の講評をまとめた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1 本研究課題の核となる原型的女性像のイメージの変遷を考察するにあたり、より広い視野をもっての土台作りのため、前年度と本年度を通して、研究代表者及び研究分担者にとって新しい分野である児童文学研究やおとぎ話研究について学び、大まかな流れを把握し、理解を深めた。 2 研究代表者は上記の新規開拓分野の調査のために参加した国際学会の内容、また、選定した短編テクストを含むアンソロジー概説をまとめ、発表した。同じく、おとぎ話再話を中心としたアプローチにより研究を進めている研究分担者は、選定したテクストの分析と考察の結果として学会での口頭発表とジャーナルへの論文発表を行った。 3 本年度の推進方策の一つとして挙げた教育現場での活動については、計画通り、文学関連の授業で新規開拓分野のテクスト紹介、分析方法指導などを実践した。特に、昨今の児童文学研究において主要な作家として注目されているニール・ゲイマンを取り上げたことは、研究代表者の学生の卒業論文指導にいかすことができ、良い成果をあげることができた。 4 研究代表者及び研究分担者の専門分野である英語圏の現代小説研究と新規分野としての児童文学やおとぎ話研究をどのように関連付け、バランスをとるかが最終年度に向けての課題であるが、具体的なテクスト分析を軸にすることで本課題の中心テーマである「女性の変身」の意味づけを明確にしていくという方針をミーティング等において確認し、この方針に従って成果発表の準備も進行中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
1 一次資料テクストの研究と成果発表について 初年度、本年度に引き続き、研究代表者と研究分担者はそれぞれのアプローチで現代英語圏文学テクストにおける女性のイメージ、即ち「変身するヒロインたち」を明らかにするためのテクスト分析を行う。本年度の発表成果を振り返っての意見交換をいかすとともに、最終年度に予定する成果発表のための研究の進捗状況と内容を、随時、互いに報告、検討、確認し、研究代表者が総括を行う。 2 教育現場での活動と成果発表について 研究代表者は、これまでの方針通り、研究課題関連で開拓したさまざまなテクストを文学や表象文化の授業でとりあげ、考察や分析の方法論及びジェンダーやイメージをめぐる議論の指導を実践する。また、扱うテクストに対する学生のレスポンスについても、研究分担者に報告し、意見・情報の交換を行う。 なお、上記のような教育現場での活動を深めるためのマテリアル作りについても話し合いを重ねてきたので、その実現のための準備を進める予定である。より具体的には、これまでの研究及び教育活動に基づいて、このプロジェクトにおける教育的目的にもっともふさわしいと思われる一次資料を選定・検討し、まとめる作業にとりかかる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
共同研究者1名の研究休暇取得のような状況の変化があり、物品費やミーティングにかかる国内旅費に多少の誤差が生じた。繰越金を含む次年度の使用計画は以下のとおりである。 1 設備費:最終年度において設備費の使用計画はない。 2 海外旅費及び国内旅費:(1)カナダにおける本研究課題関連の作家・作品調査、それらについての意見交換を目的としたミーティングのため、研究代表者はカナダ、ブリティッシュ・コロンビア大学を訪問する予定である。(2)国内の学会参加及び本課題に関するミーティング旅費を申請する予定である。 3 消耗品費:初年度、本年度と同様、消耗品費は研究図書及び、必要に応じて視聴覚マテリアルの購入に充てる。 4 その他:本年度、その他の使用予定はない。
|
Research Products
(4 results)