2011 Fiscal Year Research-status Report
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23520294
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
上原 早苗 名古屋大学, 国際言語文化研究科, 教授 (00256025)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | イギリス文学 / ハーディ / 草稿研究 |
Research Abstract |
トマス・ハーディは『森林地の人々』(The Woodlanders, 初出1887年)の原稿を執筆するにあたり、推敲に推敲を重ねたが、その生成過程は未だに明らかにされていない。生成過程を知る手掛かりとしては、『森林地の人々』の校訂版が挙げられるが、この版は、原稿の最終形のみがアパレタスによって提示されている。言い換えれば、原稿内部の生成過程は研究されずに放置されてきたと言える。本研究は、ハーディの自筆原稿内部の異同を検証することで、『森林地の人々』の創作過程を解明しようとするものである。また、創作過程を視覚的に提示する生成批評版を作成し、この小説に固有の〈創作の文法〉を明らかにすることを最終目標としている。 本研究の基本資料となるハーディの自筆原稿498葉のうち、第220葉までの解読は予定どおり、昨年度(平成23年度)中に終了した。平成23年度の研究成果は、"What Hardy’s Manuscript Tells Us: Grace Melbury in The Woodlanders"として纏め、第22回国際BAS学会 (ティミショアラ、ルーマニア)にて発表する。 また前回の科研費課題を最終的に纏める段階で、思いもかけないような発見が幾つかあり、その発見は、イエール大学で開催されたHAYII: the 2nd International Thomas Hardy Conference hosted by the Thomas Hardy Association, U. S. A. において、講演のかたちで発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、以下の三点の理由により、おおむね順調に進展していると考えられる。1)本研究の基本資料となるハーディの自筆原稿は498葉あるが、そのうち第220葉までの解読は予定どおり、昨年度(平成23年度)中に終了した。2)平成23年度の研究成果は、"What Hardy’s Manuscript Tells Us: Grace Melbury in The Woodlanders"と題する論文として纏めており、The 22nd International Conference on British and American Studies (University of the West, English Department, Timisoara, Romania, May 17-19, 2012)にて発表することになっている。3)前回の科研費課題を纏めている段階で思いもかけないような発見があり、その発見の一部を、HAYII hosted by the Thomas Hardy Association, U. S. A. にて、講演というかたちで発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に変更はなく、平成24年度は当初の計画に従い、以下の方法で研究を推進する予定である。1)ハーディの自筆原稿第221葉から第360葉までの解読を目指す。原稿をまずマイクロフィルムのかたちでドーチェスター歴史資料館から入手し、原稿内部の改変の解読に従事する。2)ただし、ハーディの手入れは、黒インク、青インク、赤鉛筆、黒鉛筆でなされているため、最終的にはドーチェスター歴史資料館において原稿の実物を見ながら執筆段階を確定する必要がある。また、経年劣化によるインクの変色は激しく、慎重に作業を進めなくてはならない。夏期休業中に2週間程度、ドーチェスターにて実物の閲読および執筆段階の確定作業を予定している。なお、閲読ならびに原稿の画像撮影にあたっては、著作権所有者のドーチェスター州立博物館の許諾が必要だが、すでに申請者は許可をとりつけてある。3)平成24年度の研究成果を論文として纏め、まずThomas Hardy Conference hosted by the Thomas Hardy Society, U. K. にて発表し、聴衆の反応を踏まえて、論文に加筆修正を施し、最終的にはイギリスあるいはアメリカの学会誌に投稿する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究費の使用計画は以下のとおりである。1)旅費:5月には、ルーマニアのティミショアラで開催される学会において、また8月はイギリスのドーチェスターで開催される学会にて、研究成果を発表する予定である。したがって、平成24年度の研究費の大くは旅費で占めることになる。2)英文校閲費(謝金):論文はすべて英語で発表するので、英文校閲費が必要になる。また聴衆の反応や研究者との意見交換を踏まえて論文に加筆修正を施すので、再度、英文校閲費が要るようになる。校閲費は、旅費についで、研究費の大くを占めることになると予想される。3)消耗品費:論文執筆に必要な、用紙、トナー、USBメモリスティックなどを購入する。
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