2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23520294
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
上原 早苗 名古屋大学, 国際言語文化研究科, 教授 (00256025)
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Keywords | イギリス文学 / ハーディ / 草稿研究 / 生成批評版 / 検閲 / 自己検閲 |
Research Abstract |
トマス・ハーディは『森林地の人々』(The Woodlanders, 初出1887年)の原稿を執筆するにあたり、推敲に推敲を重ねたが、その生成過程は未だに明らかにされていない。本研究の目的は、ハーディの自筆原稿内部の異同を検証することで、『森林地の人々』の創作過程を解明しようとするものである。 平成24年度は、当初の計画どおり、ハーディの自筆原稿第221葉から360葉までを解読した。ハーディの施した改変の中でとりわけ興味深いものについては、ルーマニアで開催された国際学会、The 22nd International Conference on BAS, hosted by the University of West, TimisoaraにてWhat the Manuscript Tells Us: Grace Melbury in The Woodlandersと題して発表した。またハーディの手入れには、出版社による介入が認められるが、明治期のハーディ小説の翻訳にも出版社による介入が認められる。両者の比較研究は文化的・言語的観点から意味があるため、研究成果の一部を、The 20th International Thomas Hardy Conference, Dorchester, UK にてWho's Afraid of Censors? Introducing Hardy in Japan と題して発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究目的は主として、ハーディの自筆原稿第221葉から360葉までをマイクロフィルムのかたちでドーチェスター歴史資料館から入手して解読に従事するところにあった。その計画どおり、360葉までの解読を終了することができたことから、また、歴史的・生成論的観点から注釈をつける作業も予定どおり進んでいることから、研究は順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、ハーディの自筆原稿の第361葉から第498葉までを、マイクロフィルムのかたちでドーチェスター歴史資料館から入手して解読に従事する。ただし、ハーディの手入れは黒インク、青インク、赤鉛筆、黒鉛筆でなされているため、最終的にはドーチェスター歴史資料館において原稿の実物を見ながら執筆段階を確定する必要がある。夏期休暇中に1、2週間程度、資料館に赴き、現物を見ながら改変を読み解いていく。現段階では、ハーディの自筆原稿498葉までのマイクロフィルムを資料館から入手し、解読を始めたところである。 なお、平成25年度の研究は、その成果の一部を論文として纏め、日本ハーディ協会会報『ハーディ研究』に投稿する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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