2011 Fiscal Year Research-status Report
エズラ・パウンドの経済論と創作原理――「利子」と「抽象」
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23520295
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
長畑 明利 名古屋大学, 国際言語文化研究科, 教授 (90208041)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | パウンド / 社会信用論 / 抽象 / ファシズム |
Research Abstract |
本研究は、1930年代にファシズムへの関与を深めたアメリカ出身のモダニスト詩人 Ezra Pound の詩と詩論を対象とし、そこに見出されるパウンドの経済論と創作スタイルの関係、とりわけ、彼の「利子」批判と「反抽象」の性格との関係性を明らかにすることを目的とするものである。 平成23年度には、主として、パウンドの経済学的関心の発展に関する文献、特に、1930年代に発表された、"Murder by Capital"(33年)、ABC of Economics(33年)、"Social Credit: An Impact"(35年)、"What Is Money For?"(39年)をはじめとする一連の経済評論を対象に、調査を行った。調査の結果、パウンドが C. H. Douglas の Social Credit における主張を再利用し、それを彼の芸術論に連結する様が明らかになった。調査は平成24年度も継続して行い、パウンドの「利子」批判と彼の詩論における「反抽象」の姿勢との接点をより明確にする計画である。 なお、7月にはロンドン大学で開催された第24回国際エズラ・パウンド学会にて、1930年代末のパウンドと東アジアに関する研究発表を行うとともに、パウンドとファシズムの関係について他の参加者と意見交換した。また、12月にはシドニー大学の Mark Byron 氏を招いて、パウンドと日本文化に関する講演会を開催し、パウンド研究について意見交換した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
パウンドの経済学的関心の発展に関する文献調査、国際学会での研究発表は概ね計画通り実施できた。ただし、文献調査を補完するために行う計画であったイエール大学での草稿調査を実施することができなかった。この草稿調査は平成24年度に実施する計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、平成24年度には、パウンドの経済学的関心の発展に関する文献調査を継続して行う。また、パウンドの経済論を客観的に評価するために、経済学の専門家に意見を聞く。研究成果の一部を国際学会にて発表する。平成25年度には、調査結果を整理し、研究成果を国内外の学会にて発表する。 なお、平成23年度に計画していたイエール大学での草稿調査は平成24年度に実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
文献調査を補完するために平成23年度に計画していたイエール大学での文献調査を実施することができなかっため、旅費の支出が当初計画を下回った。草稿調査は平成24年度に実施する計画である。また、購入を計画していた一部の図書の古書価格に変動があり、平成23年度は購入を見送ったため、物品費の支出が当初計画していた額を下回った。平成24年度には古書価格を見極めて、これらの図書を購入する計画である。
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