2013 Fiscal Year Annual Research Report
エズラ・パウンドの経済論と創作原理――「利子」と「抽象」
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23520295
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
長畑 明利 名古屋大学, 国際言語文化研究科, 教授 (90208041)
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Keywords | パウンド / 社会信用論 / 抽象 / ファシズム |
Research Abstract |
本研究は、1930年代にファシズムへの関与を深めたアメリカ出身のモダニスト詩人 Ezra Pound の詩と詩論を対象とし、そこに見出されるパウンドの経済論と創作スタイルの関係、とりわけ、彼の「利子」批判と「反抽象」の性格との関係性を明らかにすることを目的とするものである。 平成25年度には、平成24年度から継続して、パウンドの経済学関連評論の分析を行うとともに、彼の詩作品『詩篇』における「利子」批判の姿勢と彼の詩学との関連についての検討を行った。検討の結果、パウンドが『詩篇』後半において「利子」批判をモチーフとしつつ、そのモチーフを軸に、ムッソリーニとファシズムや儒教関連トピックを相互に関連づけようとしていることが確認できた。また、手法面においては、パウンドの「利子」批判と「反抽象」の姿勢には十分な連関性が認められること、また、『詩編』において「利子」批判が顕著になるにつれて、パウンドが reading-through と呼びうる創作スタイルへの移行を示すようになり、その結果、一般に『詩篇』の創作原理の根幹をなすとされる「表意文字的手法」の性質が変化していることなどを確認することができた。(ただし、「利子」批判と「反抽象」の関係については、パウンドの芸術論を踏まえた、より広い視野に立った考察が必要である) 研究成果の一部を、ダブリンで開催された国際エズラ・パウンド学会にて口頭発表した。また、現在、その内容をもとにした論文を執筆中である。(研究期間内には発表できなかったので、終了後に発表の計画である。)
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