2012 Fiscal Year Research-status Report
アンドリュー・マーヴェル研究―人間関係と表現技術―
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23520303
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
吉中 孝志 広島大学, 文学研究科, 教授 (30230775)
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Keywords | 連合王国 |
Research Abstract |
本研究は、アンドリュー・マーヴェルをめぐる人間関係を明らかにすることを最終目的としているが、初年度に引き続き当該年度も、脱党派的、脱イデオロギー的な人間関係を醸成したと考えられる「庭」という場所を17世紀的な意義のみならず普遍的な特質として考察することに時間を費やした。 初年度にイギリス・ガーデン研究会において口頭発表した研究成果をさらに拡充させて当該年度5月に行われた十七世紀英文学会全国大会において「マーヴェルのメロン」と題して研究報告した。また、初年度に十七世紀英文学会関西支部例会において口頭発表した「マーヴェルの庭と17世紀の庭」の前半部分、オウィディウスの『変身譚』と彫像、トピアリー、機械仕掛けの噴水に関しての論考を原稿を加筆修正して研究紀要において発表した。後者に関しては、当該年度4月に行った英国での調査研究の成果、特に十七世紀末から現存するトピアリーの実例観察、を反映させたものである。さらに前者に関しては、国会図書館での Early English Books on Line による資料調査による進展があった。16、17世紀の園芸書、特に1651年に再版されている Thomas Hill, Gardener's Labyrinth の中に、メロン栽培と女性との関係、さらにメロンの性的な薬効についての記述を発見することが出来た。これはマーヴェルの代表作の一つ「庭」を解釈する上で、また、制作年代を特定する上で、ひいてはマーヴェルをめぐる人間関係調査のキーマンの一人であるウォートン卿とのかかわりの点で、重要な知見を与える発見であると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
庭空間と人間関係との普遍相に関する考察は、当初の研究計画想定外の領域である。湖水地方に復元されたワーズワスの庭を調査することを当該年度も継続する必要があったことが一つの理由。もう一つの理由は、研究計画3年目にあたる平成25年度にサバティカル制度による在外研究を含めた調査を集中して行うことになり、マーヴェル研究のより局所的な調査の基盤となるように、当該年度は、国内での調査研究を主眼とし、進展の度合いとしては小規模なものとなったためである。国会図書館への出張が、本務校の教育、業務による負担のため計画通り遂行出来ず、John Hall の著作調査を開始したものの、多くがまだ手付かずの状態であるため。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画の中で限定した3人、John Hall 、William Davenant、 the Lord Wharton のうち、来年度、ホールに関しては国会図書館において EEBO を活用し全著作を閲覧調査し、マーヴェルの作品との間テクスト性を考察する。ウォートン卿に関しては、サバティカル制度を利用した在外研究を行い、オックスフォード大学ボドリアン図書館が所蔵する関連文献の閲覧調査を推進する。あわせて英国バッキンガム州の Winchendon 及び Wooburn の地誌資料、植生に関する資料収集、Hull Central Library での閲覧調査を行う。 ダヴェナントに関しては最終年度の前半を目処に最終の研究成果をまとめて発表する準備をする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国会図書館での資料閲覧のための国内出張費、連合王国での調査研究のための渡航費、滞在費、および文献収集費として使用する。
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