2013 Fiscal Year Research-status Report
アメリカン・ルネッサンス文学にみる旅の表象と旅行文学の系譜
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23520306
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
城戸 光世 広島大学, 総合科学研究科, 准教授 (10351991)
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Keywords | アメリカン・ルネサンス / ソファイア・ピーボディ・ホーソーン / トランスアトランティック研究 / アメリカ・ロマン主義 |
Research Abstract |
本年度はアメリカン・ルネッサンス期に活躍した女性作家の環大西洋を中心としたトランスナショナルな活躍に焦点を当て、同時代の作家たちの海を越えた思想的相互影響関係や、旅や移動の表象を調査し、その一端を明らかにすることを目標とした。その成果としては、前年度に日本ナサニエル・ホーソーン協会全国大会のワークショップで行った発表をもとにNathaniel Hawthorneの妻Sophia Peabody Hawthorneのヨーロッパ紀行文を分析した論文が『アメリカン・ルネサンス――批評の新生』(西谷拓哉・成田雅彦編・開文社・2013)に所収された。また彼女が20代の頃に療養の目的で滞在したカリブ海の島キューバからアメリカ本国の家族に当てた手紙をまとめた"The Cuba Journal"に見られる彼女の旅行作家としての特質を論じた「楽園の光と影――ソファイア・ピーボディの「キューバ日誌」を読む」が、共著『越境する女――19世紀アメリカ女性作家たちの挑戦』(倉橋洋子・辻祥子・城戸光世編・開文社・2014)に所収された。この論集は同時代の様々な女性作家たちの国を超えた活動や影響関係を分析した10本の論文をまとめたもので、関連する別の科研プロジェクト「十九世紀アメリカにみる女性思想家・作家たちによる環大西洋交流の社会的・文化的影響」(代表・倉橋洋子)の研究成果でもある。さらに本年度は、EmersonやHawthorneら当時のアメリカ作家たちに大きな影響を与えたSophiaをはじめとするPeabody姉妹の半生を描いたMegan Marshall氏の伝記『ピーボディ姉妹――アメリカ・ロマン主義に火をつけた三人の女性たち』(大杉博昭・城戸光世・倉橋洋子・辻祥子訳・南雲堂・2014)の刊行に向けての最終的な校正作業を行い、5年以上の年月を経てようやくこの3月上梓した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度はホーソーンのイタリア滞在記を取り上げたが、本年度はその妻ソファイアの海外体験について、キューバとヨーロッパとどちらにも焦点を当てて研究を行った成果が、二つの論文として提出できた。その過程で他の女性作家たちの旅の表象についても研究を進めることができた。またピーボディ姉妹の活躍を描いた伝記の翻訳をようやく刊行することができ、その全容を日本で広く紹介できたことの意義は非常に大きいと思われる。発表については本年度はシンポの司会しかなかったが、2014年5月には19世紀作家の旅行記に焦点を当てたシンポを組む予定があり、ホーソーンのイギリス体験と彼のナショナリズムの分析をそこで行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2014年5月に開催される日本ナサニエル・ホーソーン協会において、19世紀作家の旅行記や旅の表象に焦点を当てたシンポを組むこととなっており、ホーソーンのイギリス体験とイギリス旅行記English NotebooksやOur Old Homeについて発表を行うことが決まっている。本年度は最終年度として、ホーソーンの旅行記作家としての評価のまとめを行うとともに、他のヨーロッパ滞在をした作家たち、たとえばエマソンやストウ、アーヴィングやクーパーなどについてもできるだけ広くその滞在記に目を通し、19世紀作家たちの旅の実態やその旅行記の特徴などの分析をおこなう予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予定していた海外資料収集のための三年分の出張が、一昨年度に出産した前後で産休や育児休暇を取ったことや、まだ子どもが小さいために執行できずにおり、その分の予算の剰余が生じている。 予定としては、本年度もヨーロッパ旅行記を研究対象としているため、ヨーロッパ資料収集の出張とそのための機材の購入、また成果報告のための論文印刷や出版費用などに当てたいと考えている。
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Research Products
(3 results)