• Search Research Projects
  • Search Researchers
  • How to Use
  1. Back to project page

2011 Fiscal Year Research-status Report

イギリス・ロマン主義文学におけるダンテの意義とコスモポリタニズム

Research Project

Project/Area Number 23520307
Research InstitutionFukuoka University of Education

Principal Investigator

後藤 美映  福岡教育大学, 教育学部, 教授 (20243850)

Project Period (FY) 2011-04-28 – 2014-03-31
Keywordsイギリスロマン主義文学 / 美学 / イギリス:イタリア
Research Abstract

今年度の研究においては、キーツ、ハントらのコックニー詩派と称されたロマン主義第二世代の詩人たちの詩作において、ダンテの『神曲』がどのような影響を与え、ダンテが担ったイタリア文化がどのような意義を持っていたかについて明らかにした。具体的には次の2つの観点からのアプローチを行った。まず1点目は、ダンテの『神曲』地獄篇のフランテェスカとパオロの愛のエピソードがキーツやハントらによってどのように改作され、ダンテがイギリス文化へどのように包摂されたかについて考察した。次に、キーツの叙事詩『ハイペリオン』が、イギリスの文学遺産としてのミルトンの『失楽園』ではなく、ダンテの『神曲』を範とし、近代的文学の創出を模索した可能性について考察を行った。 まず、一点目の研究においては、ダンテの『神曲』の翻訳が19世紀初頭のイギリスにおいて流行した歴史的経緯を概観し,ダンテを受容したロマン主義時代の美学的主潮を呈示した。特に、『神曲』の地獄篇の愛のエピソードを改作することによってキーツらが目指したことは,偏狭なナショナリズムに異を唱えた、イギリス詩の改革であったことを明らかにした。さらに、当時のヨーロッパにおいてイタリアが専制政治への抵抗を象徴する国となった際,ダンテもまたロマン派詩人の自由主義思想を代弁する詩人とみなされたことを明らかにした。 二点目の研究においては、キーツが『ハイペリオン』においてミルトンの『失楽園』を叙事詩のスタイルとして援用しながらも、自身の初期の詩作において顕著であった視覚中心主義の描写を敢えて用いて叙事詩を創作した背景には、当時の叙事詩に要請された伝統的様式を超える、革新的、近代的な詩のスタイルを希求するというキーツの実験的試みが存在したことを明らかにした。そしてその創作的試みのための範となった詩作スタイルがダンテの『神曲』の視覚的イメージであったことを呈示した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

1: Research has progressed more than it was originally planned.

Reason

今年度は、研究の目的であった、19世紀初頭のイギリスにおけるダンテの再評価を通してみたイギリスロマン主義時代の美学的主潮を明らかにし、その成果の発表は、二つの国際学会にての口頭発表と、論文(国際的ジャーナル)と図書の刊行とによって達成した。特に国際学会で発表した二つの英語の論文については、国際学会に参加したロマン主義研究を主導する多くの海外の研究者らと議論し、指導を仰ぐ機会を得、今後研究を発展させるための重要な指針を見出すことができた。従って、今年度研究の目的とした研究内容の達成とその成果の国際学会での発表の実施という点において、当初の研究計画を上回る進捗状況となっている。

Strategy for Future Research Activity

今後の研究の推進方策については、平成23年度において国際学会で発表した英語論文の加筆・修正を、学会での議論で得た新たな知見を基に行い、国内外の学会誌での論文の刊行として発表する予定にしている。またさらに、ダンテを含むイタリア文学が、当時のロマン主義詩人たちが使命として抱いた近代文学の創出と、イギリスの美学的政治的改革においてどのような意義を担っていたかについて考察し、ダンテとイギリスロマン主義文学との関係についての研究を押し進める予定としている。その研究の成果は平成24年度に実施される国際学会で発表することが予定されており、その成果を学会での口頭発表によって公表する。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

今年度の研究において必要となった資料は、図書購入ではなく、他大学からの図書の借り出しが中心となったため、研究費が予定よりも少額で済み、未使用額が生じた。当該未使用額は、次年度において、今年度の資料の不足を補う図書の購入に充てる予定である。

  • Research Products

    (4 results)

All 2011

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (2 results) Book (1 results)

  • [Journal Article] "When sages looked to Egypt for their lore": Egyptian Art and the Threat of Visuality in Keats’s Hyperion2011

    • Author(s)
      後藤 美映
    • Journal Title

      POETICA

      Volume: Vol. 76 Pages: 51-63

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] "When sages looked to Egypt for their lore": Egyptian Art and the Threat of Visuality in Keats’s Hyperion2011

    • Author(s)
      後藤 美映
    • Organizer
      International Coleridge Conference, Coleridge, Romanticism and the Orient: Cultural Negotiations
    • Place of Presentation
      Kobe International Conference Center
    • Year and Date
      2011年7月17日
  • [Presentation] "[I]njudicious luxuriancies": Dante and Italy in Keats’s Hyperion2011

    • Author(s)
      後藤 美映
    • Organizer
      Encountering Malta: British Writers and the Mediterranean 1760-1840
    • Place of Presentation
      University of Malta (Republic of Malta)
    • Year and Date
      2011年11月19日
  • [Book] イギリス・ロマンティシズムの光と影 (共著)2011

    • Author(s)
      後藤 美映
    • Total Pages
      75-94
    • Publisher
      音羽書房鶴見書店

URL: 

Published: 2013-07-10  

Information User Guide FAQ News Terms of Use Attribution of KAKENHI

Powered by NII kakenhi