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2012 Fiscal Year Research-status Report

イギリス・ロマン主義文学におけるダンテの意義とコスモポリタニズム

Research Project

Project/Area Number 23520307
Research InstitutionFukuoka University of Education

Principal Investigator

後藤 美映  福岡教育大学, 教育学部, 教授 (20243850)

Keywordsイギリス・ロマン主義文学 / ミルトン / ダンテ
Research Abstract

今年度の研究においては、19世紀初頭にイギリスで受容されたダンテの中心的作品は『神曲』であり、特にロマン派の詩人による叙事詩の創作に大きな影響をもたらした点に焦点をあて、叙事詩としての『神曲』の意義について考察した。
当時、叙事詩に要請された美学的趣味は、フランス的新古典主義の主潮を汲む節度と抑制であった。ナショナリズムの意識が顕著化した時代性を反映するように、イギリスの文学的遺産であるジョン・ミルトンの『失楽園』がその範とみなされ、『失楽園』の抑制された崇高なイメージとスタイルが伝統的な規範として信奉された。そうした時代背景にあって、ミルトンと双璧をなす作品として、イタリアのダンテの『神曲』がロマン派の第二世代の詩人たちの叙事詩創作に大きな影響を与えたことの意義について考察した。
具体的には、ジョン・キーツの叙事詩『ハイペリオン』の創作が、イギリスの文学的伝統に名を連ねることよりも、当時の叙事詩に求められた伝統的規範を逸脱する、自由主義的な詩作を目指すことであったことを明らかにした。キーツの意図した自由主義的詩風は、ミルトンの『神曲』に内包された抑制されたスタイルを拠り所とする伝統的趣味によってもたらされたのではなく、過剰ともいえる抒情的なミルトン的崇高さによってもたらされたことを論じた。またさらに、その抒情的なミルトン的崇高さは、ダンテの『神曲』と通底するスタイルであったことを考察し、ミルトンとダンテを詩作の淵源として生み出されたキーツの自由主義的叙事詩は、イギリスの文学的伝統とイタリアの文学遺産との融合によって生み出されたコスモポリタンの精神性に基づいていたという結論に至った。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

今年度は、保守反動の動きを強めたイギリスにおいて、ロマン派の第二世代の詩人たちが叙事詩を創作することは、自国のナショナリズムを唱えることではなく、イギリスとイタリアとの文学的文化的融合というコスモポリタニズムにより新しい叙事詩を生み出すことであったことを明らかにした。そして、そのためにダンテの『神曲』が重要な役割を果たしたことを考察し、研究目的であったダンテの『神曲』とコスモポリタニズムの精神性を明らかにするという目標をおおむね達成した。また、この成果を国際学会で口頭発表し、専門誌において論文として発表したことにより、研究はおおむね順調に進展しているといえる。

Strategy for Future Research Activity

研究期間の最終年度にあたる平成25年度においては、これまでに国際学会で発表した3本の英語論文をさらに発展させ、ヨーロッパ近代文学の祖と謳われたダンテの『神曲』の近代性に着目することによって、イギリス・ロマン派第二世代の詩人達によって表明されたコスモポリタニズムの精神性をより具体的に明らかにする予定である。その研究の成果は、国内外の雑誌にて論文を発表する予定である。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

論文による成果報告のため、主に図書の購入と資料収集に関わる複写費と旅費として使用する予定である。

  • Research Products

    (2 results)

All 2013 Other

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (1 results)

  • [Journal Article] “Life to him would be death to me”: The Romantic Struggle against the Miltonic Legacy in John Keats’s Hyperion2013

    • Author(s)
      後藤 美映
    • Journal Title

      Essays in English Romanticism

      Volume: Vol. 37 Pages: 49-62

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] “Life to him would be death to me”: The Romantic Struggle against the Miltonic Legacy in John Keats’s Hyperion

    • Author(s)
      後藤 美映
    • Organizer
      Tenth International Milton Symposium
    • Place of Presentation
      青山学院大学

URL: 

Published: 2014-07-24  

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