2013 Fiscal Year Research-status Report
近現代英米文学における環太平洋旅行表象の思想史的研究
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23520313
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
新井 英永 熊本大学, 文学部, 教授 (00212598)
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Keywords | ミシェル・フーコー / エドワード・サイード / ドゥルーズ=ガタリ / D.H.ロレンス / ジェイムズ・ジョイス / ポストコロニアル批評 / 小説 / 逃走線 |
Research Abstract |
近現代英米文学における様々な環太平洋旅行表象の検討を行うのが本研究の目的である。この目的を達成するために、実際の分析作業においては、ミシェル・フーコーやエドワード・サイード、ドゥルーズ=ガタリ等に代表されるポスト構造主義ないしポストコロニアル批評の知見を最大限かつ批判的に活用することを前提としている。 本年度は、D.H.ロレンス等の環太平洋旅行表象の特徴を際立たせるために、ロレンスとジェイムズ・ジョイスの旅の方向性や捉え方の類似点と相違点の把握を試みた比較論考、“An Encounter with the Real: A Lacanian Motif in Joyce's ‘The Dead’ and Lawrence's ‘The Shadow in the Rose Garden’”、の仕上げを行った。この論考の収録が認められていた論文集(Heather Lusty, Matthew J. Kochis編、 Joyce & Lawrence: The Modernist Odd Couple )は、フロリダ大学出版局により2015年春に出版されることが正式に決定した。 また、昨年Rodopi(アムステルダム、ニューヨーク)との出版契約が成立したロレンスの環太平洋旅行表象を検討する英語単著(タイトル: Literature along the Lines of Flight: D. H. Lawrence's Later Novels and Critical Theory)の原稿の加筆修正を行った。早ければ2014年度(H26年度)中に刊行される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Rodopi(アムステルダム、ニューヨーク)との出版契約が成立し、ロレンスの環太平洋旅行表象を検討する英語単著(Literature along the Lines of Flight: D. H. Lawrence's Later Novels and Critical Theory)の刊行に向け大きく前進できたことは収穫であった。 その反面、この著書の原稿の加筆修正等に時間がかかったため、ジェイムズ・ジョイスを除きロレンスと直接・間接にかかわりのあった英米の作家たちの作品分析が十分にできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の成果を踏まえ、引き続き研究の発展・拡大を図る。とりわけ、南海諸島や東南アジア諸国、日本を含む環太平洋地域を広範囲に旅行かつ表象し、メキシコではD.H.ロレンスと興味深い出会いを果たしているモームの再検討を重点的に行いたい。 一方、本研究のまとめとして、論文:“An Encounter with the Real: A Lacanian Motif in Joyce's ‘The Dead’ and Lawrence's ‘The Shadow in the Rose Garden’”(Heather Lusty, Matthew J. Kochis編、 Joyce & Lawrence: The Modernist Odd Couple に収録予定)、ならびに単著(Literature along the Lines of Flight: D. H. Lawrence’s Later Novels and Critical Theory)の刊行を確実に遂行したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究成果発表や資料収集、研究打合せが十分に行えなかったため、旅費の使用額が少なかった。また、コンピューター関連の機器もほとんど購入しなかった。 前年度に引き続き、英米文学・思想ならびに環太平洋歴史・社会関係図書を購入する。また、データ・ベース化作業には高性能のコンピューターと関連ソフトが必要であるため、環境の充実を図る。旅費については、国内外での研究成果発表ならびに資料収集を予定している。また、環太平洋地域の文学・文化ないし旅行表象を研究する者が議論しその成果を発表・出版するために、研究打合せも必要となろう。さらには、英語単著の出版するにあたり、英文校正による支出も引き続き見込んでいる。
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