2011 Fiscal Year Research-status Report
19世紀イギリス小説における「違法性」の表象の分析
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23520321
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
永富 友海 上智大学, 文学部, 准教授 (60305399)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 売春婦 / 私生児 / 違法 / ヴィクトリア朝 / filiation / affiliation |
Research Abstract |
1. 18世紀~19世紀英国における私生児、売春婦をめぐる法律関係の一次史料収集を、夏季・春季休暇を利用して、国内外の図書館、ブリティッシュ・ライブラリでおこなった。2. Dickensの慈善活動の重要な一環をなすUrania Cottage(売春婦の更生施設)の創設運営をめぐる研究に着手するにあたり、この施設を経済的に支えたAngela Burdett-Coutts の評伝の閲覧、史料収集を、お茶の水大学でおこなった。3. Dickens, Wilkie Collins, M.E.Braddon, Trollope, Hardyを、センセーションという観点から論じたDPhil論文の複写を、国内で唯一所蔵している名古屋大学言語学センターで閲覧した。4. Thomas Hardy の The Return of the Native における「filiation(=生物学的親子関係)」から「affiliation(構築的疑似親子関係)」への移行を読み取るにあたって、ヒロインと売春の言説との関与性に着目した。当論文は所属学科の紀要において発表した。5. Dickens のOliver Twist, Collins のThe Woman in White, Braddonの Lady Audley's Secretを私生児、身内の組み換えという見地から比較し、3作品の結節点として機能している兄弟姉妹の言説の分析をおこなった。当論文は、今年度発行の『英国小説研究』24(英潮社)に所収される予定である。 6. Hardyの The Mayor of Casterbridge における空白の問題を、ヒロインの「私生児性」と、ヒロインのダブルとしての女性キャラクターをめぐる「売春婦」の言説という観点から分析した。当論文は今年度、Fathom e-journalにおいて発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. 18世紀~19世紀英国における私生児、売春婦をめぐる法律関係の一次史料収集はきわめて順調である。本年度も引き続き、夏季・春季休暇を利用して、国内外の大学図書館、およびブリティッシュ・ライブラリで行う予定である。2. 1で収集した史料の整理に関しては、当初アルバイトを雇う予定でいたが、内容がきわめて専門性の高いものであるため、学生アルバイトの手には負えないと判断し、自身でおこなうことにした。そのため、予定よりもやや遅れをみているが、本年度収集予定の史料と合わせて、夏季休暇を利用し、集中的に整理をおこないたいと考えている。3. 具体的な作品の読解分析については、昨年度は、予定以上の成果をあげることができ、3本の論文を執筆した(うち1本はすでに学科の紀要において発行済み、残り2本は、学術雑誌とe-journalにおいて、今年度発行予定である)。4. 当研究は、サセックス大学に提出したDPhil論文を基にした著作の重要な一角を成すことになっている。この著作については、英語で執筆したDphil論文を日本語に置き換えるにあたり、少なからぬ手入れが必要である。そのような作業も含め、予想よりもはるかに時間と労力を要する仕事となっているが、当研究が完成をみる来年度に照準を合わせて、執筆完了を目指している。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 18世紀~19世紀英国における私生児、売春婦をめぐる法律関係の一次史料収集を、夏季・春季休暇を利用して、引き続き国内外の図書館、ブリティッシュ・ライブラリでおこない、収集した史料の整理、読解分析をおこなう。2. Thomas HardyのThe Woodlandersを精読したうえで、すでに分析を終えている、もしくは現在分析をおこなっているHardyの他の長編作品--Under the Greenwood Tree, The Return of the Native, The Mayor of Casterbridge, Tess of the d'Urbervilles, Jude the Obscure--との関係性を確認し、illegitimacyをキーワードとして分析する。3. Dickensの数ある慈善活動のなかでも大きな比重を占めていたと考えられる売春婦の更生施設ーUrania Cottageについての調査分析をおこなう。これについては、所属大学の講義においてとりあげる予定であるので、毎週の講義の成果をまとめ、精査して、論文の形にまとめていく。4. George EliotのAdam Bedeにおける「私生児」をめぐる言説分析をおこなう。この作品は、所属大学の大学院の演習において取り上げる予定であるので、精読に基づいたディスカッションを通して、作品の多角的な読みを浮かび上がらせ、そこから「私生児」の問題の重要性を再検討することにより、さらに精緻な分析を実現させたいと考えている。5. 以上の分析の成果は、ハーディ学会での口頭発表や、紀要、学術雑誌上での発表に結び付けていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1. 18世紀~19世紀英国における私生児、売春婦をめぐる法律関係の一次史料収集を、夏季・春季休暇を利用して、引き続き国内外の大学図書館、およびブリティッシュ・ライブラリでおこなう。ロンドン大学で開催される19世紀英国の歴史、文化関連のセミナー、レクチャーに、積極的に参加する(国内旅費、外国旅費)2. 18世紀~19世紀英国における私生児、売春婦をめぐる法律、歴史、文化関連の図書を購入する(消耗品費)。Dickens, Collins, Trollope, G.Eliot, Hardyに関する新しい研究書、評伝、パーパーバック版を購入する(消耗品費)3. 辞書類、PC関係のソフトを購入する(消耗品費)4. 他大学からの図書の取り寄せ、論文の複写の郵送を依頼する(その他)5. 英語で執筆した論文のネイティヴ・チェックを依頼する(謝金)
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Research Products
(1 results)