2012 Fiscal Year Research-status Report
マーガレット・フラーにみる１９世紀アメリカの女性のキャリア形成とジェンダー意識
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23520323
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| Research Institution | Taisho University |
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Principal Investigator |
伊藤 淑子 大正大学, 文学部, 教授 (50223201)
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| Keywords | マーガレット・フラー / 19世紀アメリカ / ジェンダー / キャリア意識の形成 / 女性の権利 / 超絶主義 / 社会改革 / ジャーナリズム |
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| Research Abstract |
平成24年度の中心的な取り組みはフラーの代表的な著作である『19世紀の女性』の翻訳であった。『19世紀の女性』はアメリカにおける女性の権利に関する最初の本と位置付けられるべきものであるが、その英語の難解さと例示される物語や伝説の多様性があってか、これまで日本語に訳されてはいない。章に区切られることもなく、連綿と続く連想のようなフラーの論述は、たしかに議論のポイントを把握しにくいものである。しかし何度もカープを曲がってようやく見えてくる景色のように、フラーの主張しようということは明確そのものであるといえる。19世紀半ばの科学的な理解は、ときとしてフラーにも疑似科学的な推論をさせるし、ヴィクトリアン・アメリカの価値観はフラーにおいてすら、女性の人間としての完成の可能性を理想の婚姻のなかに描かせもする。しかし時代の制約を超えて、機能主義的なジェンダー観を退け、すべての条件を男女で同等にしてみなければ、両性の特性を議論することはできないというフラーの主張は、いまでも有効である。反語に反語を重ねていくフラーの螺旋階段のようなフラーの文体を、できるかぎり原文の流れを損なわないように、わかりやすい日本語になるようにしていくことは、私自身がフラーの真意とするところを手繰り寄せる作業でもあった。
その考察にもとづき、所属する「アメリカ文学女性像研究会」の機関誌に「マーガレット・フラー『19世紀の女性』にみる理想の女性、男性、そして社会」と題して論文を寄稿した。特定の社会改革運動に直接的な関与をしようとはしなかったフラーではあるが、リーダーシップを発揮したり、社会の表舞台に立つことを望む女性ではなくとも、社会の要請する規範のうちにとどまりたいと願う女性であっても、精神的に向上し意識を変えることによって社会改革に貢献できると、きわめて現実的に考えていたのがフラーである。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
『19世紀の女性』の翻訳の出版はこれからであるが、原稿はそろい、校閲がほぼ終わっている。まもなく出版にこぎつけることができる状況である。
フラーが『ニューヨーク・トリビューン』で編集者として働き始めたあとの著作についても読み進めている。本年度中にはキャリア意識の形成という視点から、フラーのジェンダー観を当時の社会的な状況をふまえてまとめていきたい。
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| Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は本研究の最終年度にあたる。成し遂げたいことは次の3点である。
①『ニューヨーク・トリビューン』の編集者として働き始めたことが、『19世紀の女性』までの女性観や社会観にどのような変化をもたらしたかを検証する。
②ニューヨーク、あるいは特派員としてヨーロッパに移り、ボストンを離れたあと、超絶主義的な思考にどのような変化があったのかを検証する。
③フラーが同時代、あるいは後世の人びとによって、どのように論じられ、どのようにその思想が批判、あるいは継承されたのかを検証する。とくに宗教とジェンダーという視点から、ゾラ・ニール・ヒューストン、また、自身の著作にフラーを登場させ、フラーと同様に文学から論説へと移行するスーザン・ソンタグがどのようにフラーとの思想的接点をもつかということも考察の射程におき、本研究をさらに発展させる道筋を探りだしたい。
①と②については十分に時間を割き、本年度中には研究当初の目標であったフラーに関するまとまった書籍の出版という目標を目指したい。③については、その延長線上に目指す目標として、並行して考察を深めていきたい。
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| Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(2 results)
