2013 Fiscal Year Annual Research Report
マーガレット・フラーにみる19世紀アメリカの女性のキャリア形成とジェンダー意識
Project/Area Number |
23520323
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Research Institution | Taisho University |
Principal Investigator |
伊藤 淑子 大正大学, 文学部, 教授 (50223201)
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Keywords | マーガレット・フラー / 19世紀の女性 / アメリカのフェミニズム / 女性のキャリア意識 / ジェンダー / 超絶主義 |
Research Abstract |
マーガレット・フラーの主著である『19世紀の女性』を日本語に翻訳し、出版できたことが、かたちになった本年度のもっとも大きな成果である。訳文の確認や出版までの作業に時間がかかったが、19世紀前半のアメリカにおける女性の権利の主張を丁寧に追い、解説をつけて成果を公表することができた。 南北戦争前の19世紀アメリカという特殊な環境において、女性が自立した知性を表明しようとするとき、どのような語彙や論理性を活用することができたか、どのようなジェンダー意識を前提に女性の権利を求め、どのような新しい女性の生き方を提示することができたか、という問いを研究の目的に掲げてフラーの著述を読み、分析をした。短い論考は発表したが、研究期間中にその成果をすべてかたちあるものにすることはできていない。当時主流にいた男性超絶主義者たちの思想や文学表現とフラーの獲得した言説の差異、フラーのアメリカフェミニズムに対する影響関係、ジャーナリストとしてのキャリア形成の過程におけるフラーのジェンダー意識の変化、ヨーロッパ滞在においてフラーが受けた影響やフラーのヨーロッパ観ならびに国際意識の変化、さらに革命や戦争に対するフラーの姿勢についての分析と考察をまとめているところである。 日本において大きな関心の高まりがあったとは言えないが、アメリカにおいては2010年の生誕200年を期してさまざまな取り組みがみられ、本研究の期間中に学術的な評伝が2冊刊行されるなど、フラー研究の活性化が顕著になり、あわせて同時代の文化的な状況についての研究も多く見られるようになった。それらの研究成果にも目を向けながら、さらに本研究で得たことを深め、私の今後の研究に活かしたい。パイオニアとしてのフラーの主張には矛盾や限界もあるが、フラーが描いたジェンダーの理想が200年を経てもなおラジカルであることに、ジェンダー問題の本質があると考える。
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Research Products
(3 results)