2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23520325
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Research Institution | Takushoku University |
Principal Investigator |
大森 裕二 拓殖大学, 工学部, 准教授 (40384698)
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Keywords | アメリカ演劇 / Eugene O'Neill / Tennessee Williams |
Research Abstract |
25年度は、主に以下の三つの研究を行なった。 (1)オニールの初期一幕劇『朝食前』(Before Breakfast) 論の公表に当たり、昨年度研究会で口頭報告した原稿に加筆修正の作業を行なった。あくまでも内なる野生に従って自由に生きようとする芸術家が死と破滅に至るパラドックスを描く本作品は、ディオニュソス的な主題を扱ったオニールの最初期の作品として意義深いことを論じた。 (2)オニールの中期仮面劇『偉大なる神ブラウン』(The Great God Brown) について学会で口頭報告を行なった。作者オニールは、幼馴染の二人の人物、ディオニュソス的な祝祭人間たるダイオンと「真面目な成功の神」ブラウンの融合を描くことで、物質主義的成功神話に代わる、大地に根差した人間と文明のあるべき姿の再生を幻視しようとしていることを論じた。 (3)オニールの中期長編劇『奇妙な幕間狂言』(The Strange Interlude) について学会で口頭報告を行なった。「母」になることを目指すヒロイン・ニーナの自己実現が、母なる大地から乖離した父権的物質主義文明に対するアンチテーゼとしてあることを論じた。 (1)と(2)で扱った両作品に登場するのが「芸術家の放蕩」のモチーフであるが、これは祝祭的な生を十全に生きることができない文化状況を反映したものであり、そこには作者オニールの思想的バックボーンとしてニーチェの生の哲学の多大な影響が見られることを指摘した。これによって、本研究プロジェクトの当初からの目標の一つだったオニール演劇における「放蕩者」型人物の系譜の一端を解明することができた。また、(3)では、ミラーやシェパード等、オニール以降のアメリカ劇作家の作品にも触れながら、資本主義が主導する現代文明の父権的・軍国主義的な負の側面を論じた。
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Research Products
(4 results)