2011 Fiscal Year Research-status Report
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23520327
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
郷 健治 帝京大学, 外国語学部, 教授 (50266285)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | イギリス / 英文学 / シェイクスピア / キリスト教 / 英国国教会 / 欽定説教集 / 書誌学 / イギリス・ルネサンス演劇 |
Research Abstract |
1、イングランド国教会『欽定説教集』のテクスト研究のための16-19世紀諸版本の蒐集について。残念ながら、16-18世紀の版本で未所持の版は手に入らなかったが、19世紀の版本で未所持のものを数冊あらたに蒐集できた。2、『欽定説教集』がシェイクスピアの諸作品に及ぼした影響の研究。 すでに日本語の論考として発表した『夏の夜の夢』と『欽定説教集』のテクストの関連性の研究を本格的な英文論文として発表すべく、2011年度春から夏にかけて、必要な数多くの新旧のシェイクスピアその他の英文研究書を蒐集し、これを読み、考察を進めた。夏休暇中にこの英文論考の草稿を書き上げた。 秋には、2012年春の日本英文学会全国大会での研究発表「シェイクスピアとW.H.氏とウィリアム・ハーバート」、および、2012年秋の日本シェイクスピア学会におけるセミナー「『ソネッツ』解釈の展望」(東京大学の高田康成教授との共同提案)のコーディネーターとしての発表の申請書を作成した。(そして、年度末にいずれの発表も無事採択された。) 冬から春期休暇にかけては、英文の1万語余の長論文『Bottom's Dream Revisited: In the Light of the Books of Homilies』をようやく完成させ、これを著名なイギリスの英文学専門誌に投稿した。(現在、査読・審査中。)また、この論文を執筆している過程で、『夏の夜の夢』のこれまでの解釈を大きく変えてしまうような、まったく思いがけない画期的な発見があり、この論考を近い将来英文論文として発表すべく、その構想・骨子も春休暇中に同時に完成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請時には、2011年度中に、『欽定説教集』がシェイクスピアの諸作品に及ぼした影響を考察する長短数本の論文を執筆する予定であったが、『夏の夜の夢』が『欽定説教集』の中の説教「死を恐れることへの訓戒」を下敷きにして書かれた作品である、という発見は、予想以上にその意味が大きく、重要性の高い論考となり、最終的にはこの論考が1万語を超える長文の英文論文となり、その完成には時間を要した。また、『夏の夜の夢』はシェイクスピアの諸作品の中でもことに研究書・論文が多く、新旧数多くの研究書・論文を読む必要が随時でてくるため、論文の完成までに予想以上に時間がかかった。 また、この春休暇中に、『欽定説教集』と『夏の夜の夢』との関連性を糸口にして、これまでの『夏の夜の夢』の解釈を一新してしまうような非常に大きな画期的な発見があり、この新たな発見を英文の論文として近い将来に執筆すべく、その構想・骨子を完成させるために研究の時間を相当費やしたために、他の作品に関する論文を執筆する時間は取れなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2012年度は、5月末の日本英文学会全国大会での研究発表「シェイクスピアとW.H.氏とウィリアム・ハーバート」、および、10月の日本シェイクスピア学会におけるセミナー「『ソネッツ』解釈の展望」(東京大学の高田康成教授との共同提案)のコーディネーターとしての発表を控えている。いずれも、申請時には予定していなかった研究発表だが、『欽定説教集』のテクストが『ソネット集』に影響を与えている、という研究成果を含め、今年度は『ソネット集』の不可解な謎を解明すべく、この詩集全般の研究を進めていく。 これは、本申請者が、2000年にオックスフォード大学へ提出した学位論文(博士)の研究成果をさらに発展させたもので、これまで、解けない謎である、とされてきたシェイクスピアの『ソネット集』の謎が、従来見落とされてきたサミュエル・ダニエルの作品と『欽定説教集』のテクストとの関連性を糸口にして解明できる、という新説を発展的に提起するものとなる。2012年度の2つの学会発表と並行して、このあらたな論考の成果を英文論文、そして、日本語での論考としても執筆する予定でいる。その完成が2012年度末となるかどうかは未定である。 今年度取り組むこの『ソネット集』研究を英語と日本語の論考として執筆したのち、『欽定説教集』とシェイクスピアの諸劇作品とのテクスト上の関連性についての研究成果を英文の論考として執筆し、できるだけ早い時期に、イギリスから『Shakespeare and the Books of Homilies』というタイトルの1冊の研究書として出版できるようにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
『欽定説教集』のテクスト研究のための未所持の16-19世紀の諸版本の蒐集は実際上非常に困難ではあるが、可能な限りこれを続ける。 また、2012年度はこれまでの本申請者のシェイクスピア『ソネット集』研究を発展的に完成させるため、この作品に集中して研究を進める予定である。そのために随時必要となる新旧のシェイクスピア関連の研究書・諸版本を蒐集するために科研費を最大限に活用する予定である。
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