2012 Fiscal Year Research-status Report
近代初期イングランド演劇にみるシャリヴァリ表象と演劇のパブリック圏創出機能
Project/Area Number |
23520337
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Research Institution | Kanto Gakuin University |
Principal Investigator |
中村 友紀 関東学院大学, 経済学部, 准教授 (80529701)
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Keywords | 近代初期イングランド / 復讐劇 / 仮面劇 / パブリック圏 / 自己認識 / 心性 / コミュニティ / パブリック |
Research Abstract |
2012年度は近代初期イングランド演劇において初期段階パブリック圏の概念がどのような意味において、またどの程度適用可能かを検証した。おもに1590年代から1610年代の戯曲作品を対象に、芝居という表象形態において表現されたパブリック圏概念を見出し、ハーバマスのパブリック圏定義との異同を検証した。この分析にあたり、パブリック圏にかかわる社会学や文学批評や歴史研究の理論を活用し、近代初期仮面劇の先行研究を参照した。 復讐劇を取り上げ、権利や正義の概念というモラルやルールの枠組みからコミュニティや社会のイメージを探り、また個人の社会的関係性や自己認識のあり方を分析した。また演劇表象の受容体験に加え、観客の出演や批評・評価など能動的参加と、芝居の内容による作用から観客のうちに近代的自己認識が生じたプロセスを検証した。 本研究の意義として上げられるのは、ハーバマス的公共性の観点から復讐劇のジャンル批評がまだ多くなされていない状況で、先鞭をつけた点である。ハーバマスのいう公共圏の概念は、18世紀のヨーロッパ社会についてのものであるが、しかし、パブリック圏は18世紀に突如出現したものではなく、その予兆・萌芽が前世紀に存在すると考えるのは自然なことであり、本研究はその検証を目指すものである。現時点では、近代初期文学研究、ルネサンス研究、あるいは文化史研究において、17世紀イングランドに公共性をあてはめる試みはまだ多くはない。本研究が新たな指摘を行う余地があり、学界への成果のアピールには大きな意義がある。 具体的に今年度の研究の成果として挙げられるのは、2012年6月のシンポジウムへのパネリストとしての参加、2012年12月の学会における口頭発表、および、2013年3月の学会紀要に掲載された論文、さらには2013年3月に学会紀要に投稿し7月の掲載が決定している論文である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
近代初期イングランドの演劇において生じたパブリック圏の、18世紀のパブリック圏との異同、および18世紀のものの出現の前条件としての特質を分析することができた点で、当初より掲げている命題をかなりの程度まで明らかにできている。こうした議論のための資料も、これまでにある程度集め、活用できている。また、成果については、学会での発表2回、学会誌への掲載・投稿(掲載確定済み)論文は合わせて2本あり、当初の目標を上回っている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度も引き続き当該研究テーマの検証作業を続けていく。エリザベス朝、ジェイムズ朝の演劇におけるパブリック圏について、ハーバマスの言う18世紀パブリック圏の萌芽・前段階としての意義を検証する。特に平成25年度は、民衆の集団行動に目を向け、近代初期イングランドのパブリック圏の出現の条件や性質を、民衆の集団の特質やその集合的経験の個人のメンタリティへの作用との関連で考察する。本研究ではそうした集団経験の一例として集団儀礼のシャリヴァリに注目する。シャリヴァリについては巡回裁判などの記録文書からの情報が必須であるため、既に集めた資料や、今後収集する資料も合わせて分析し、演劇表象の中の様々な表現を考察するための論拠とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に未使用で「次年度使用額」として請求するものは、本来の平成25年度請求分の項目の中でも不足の発生が見込まれる項目に上乗せしたい。現時点では、平成26年3月の海外での大会発表が予定されているが、これは予定より成果を多く産出できたために生じた予定外の発表機会であり、さらに旅費に充当する必要がある。また、追加の資料が必要となる可能性があるため、資料収集に再度赴く可能性もある。その際、旅費が必要となる。 上記のような場合以外は、使用計画は概ね当初の予定通りであり、国内学会発表のための旅費、学会誌の論文掲載料、資料の現像料・コピー料、文献書籍購入代金、論文印刷のインク代金などに研究費を使用する。
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Research Products
(4 results)