2011 Fiscal Year Research-status Report
大戦間のアメリカ南部における身体表象と人種的及び性的ハイブリディティ
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23520338
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
森 有礼 中京大学, 国際英語学部, 准教授 (50262829)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | フォークナー / 南部 / 大戦間期 / ハイブリディティ / クイア / 人種 / 精神分析 |
Research Abstract |
本研究は、両大戦間に生じた、アメリカ南部からの黒人人口の流出が、白人の自己形成において、特にその社会的・文化的側面に対してもたらした諸変容について、白人の身体表象の変遷を通じて確認することを目的とする。特に本論で強調するのは、南部の人種的ハイブリディティにおける上記の変容を、性的身体の多様性の隠喩として認識するその様態について、特にこの時期の白人中産階級の歴史的推移と関連付けて考察するものであり、いわゆる性差、階級及び人種の区分が、多分に南部の白人の身体表象を通じて維持されていることを、特にフォークナー(William Faulkner)の1930年~1940年代の作品に焦点を当てて検証することを目的とする。 以上の目的達成のため、平成23年度は南部における白人及び黒人の社会的・文化的ステレオタイプの変遷を文献実証的に検証し、これらが白人中産階級の社会的・文化的マイノリティに対する抑圧的姿勢を表象していることを確認することを試みた。同研究成果は、平成23年10月7日開催の日本ウィリアム・フォークナー協会第14回全国大会シンポジウム「フォークナーと身体表象」 (於関西学院大学)において、「If I Forget Thee, Jerusalemにおける身体性の残余」と題する発表において公開した。この公開記録は、平成24年4月発行の研究雑誌『フォークナー』第14号(日本ウィリアム・フォークナー協会編刊行)に掲載の予定である。 なお、以上の研究によって、白人社会における人種的ステレオタイプは常に性的マジョリティにとっての「クイア」な存在として表象され流通していることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度においては、研究目的達成のための基礎資料の収集、及び現地調査を中心とした活動を行う予定であった。具体的には、再建期の南部について、これまで重要視されてこなかったと思われる文献資料を収集することを目的として、主として国内研究施設への、資料収集のための調査旅行を行い、当該地域・時代に関する文献資料を入手分析する。併せて、研究方針の妥当性確認のため、国内での共同発表への参加も予定されていた。 以上の二点については一定の目標を達成し、共同発表を実施したことにより、所期の目標を概ねクリアしたと評価できる。但し、もう一つの計画であった、優れた先行研究成果を挙げた研究者を招いて実施予定の研究会については、研究協力依頼候補者の都合がつかず、次年度に開催を延期することとなった。そのため、現段階での研究内容の精査及び第三者評価を受けることができておらず、この点においては当初の達成目標を次年度に先送りする結果となったため、全体としては「やや遅れている」と自己評価するものである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度以降は、平成23年度より懸案の外部研究者を招いて実施予定の研究会を実施し、自己の研究成果の外部評価を受けると共に、情報提供や意見交換を行う予定である。但し、この小研究会は外部講師を招聘しての講演会形式をとり、広く同分野の研究者に開かれたものとする。なお、本研究会については、研究協力依頼候補者の都合上、平成24年度に開催予定であったものと併せての開催となる予定である。 また、上記研究会開催の予備的準備と、広く国際的な研究動勢について研修するため、また調査及び資料収集のため、平成24年度は特に合衆国での国際学会(The Faulkner and Yoknapatawpha Conference)への参加と、ミシシッピ大学図書館での資料収集を予定している。 こうした研究作業を通じて、引き続き文献実証的に人種的・性的ハイブリディティとそのステレオタイプの形成と変遷について論証を進めてゆく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、まず前年度よりの懸案であった研究会を講演会形式で開催するため、講演会講師謝礼として15万円を計上している。 また、海外での研究動勢研修のため、合衆国での国際学会(The Faulkner and Yoknapatawpha Conference)への参加と、ミシシッピ大学図書館での資料収集、及び国内の関連学会への出席や文献調査を予定しており、このために45万円を計上している。 併せて図書資料などの収集のため、19万円を予定している。いずれも平成24年度中に執行の予定である。
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