2011 Fiscal Year Research-status Report
十九世紀アメリカにみる女性思想家・作家たちによる環大西洋交流の社会的・文化的影響
Project/Area Number |
23520339
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Research Institution | Tokai Gakuen University |
Principal Investigator |
倉橋 洋子 東海学園大学, 経営学部, 教授 (10082372)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻 祥子 松山大学, 人文学部, 准教授 (60299360)
城戸 光世 広島大学, 総合科学研究科, 准教授 (10351991)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 環大西洋交流 / 女性思想家・作家 / 19世紀アメリカ社会 / 奴隷制 / 女性の権利 / 先住民の問題 / 教育 |
Research Abstract |
本研究の目的は、環大西洋交流により英米の女性思想家・女性作家たちが、奴隷制、女性の権利、教育、及び先住民の問題等の社会問題を内包していた19世紀アメリカ社会に与えた社会的・文化的影響を明らかにすることである。 辻 祥子は、国内外で資料を収集し、チャイルドの『ニューヨークからの手紙』(1843)とディケンズの手記『アメリカ紀行』(1842)を両者の国籍、ジェンダー、社会的立場の違いから比較した論文「二つの迷宮をさまよう女性--チャイルドの『ニューヨークからの手紙』」を執筆し、共著『カウンターナラティヴから語るアメリカ文学』(音羽書房鶴見書店、2012年度刊行予定)に掲載されることが決定している。 城戸光世は、ホーソーンの長編『大理石の牧神』を旅行記とロマンスの混淆として分析する論文を執筆し、共著『カウンターナラティヴから語るアメリカ文学』(音羽書房鶴見書店、2012年度刊行予定)に掲載されることが決定している。 また、倉橋洋子と城戸光世は、2012年5月開催の日本ナサニエル・ホーソーン協会年次大会におけるワークショップ(「ピーボディ姉妹とホーソーン―――ヨーロッパと中南米への視座」)にて口頭発表する準備を行った。倉橋洋子は、ピーボディ姉妹に関して、アメリカの図書館等で収集した手紙や書物を中心に、中南米への視座としてメアリー・マンの著作、『フォアニータ』について、城戸は、ホーソーン家の旧大陸旅行とソファイア・ホーソーンのイタリア旅行紀についての発表の準備を行った。 さらに、倉橋洋子、辻祥子、城戸光世は、Megan Marshall著The Peabody Sisters(Houghton Mifflin Company)の翻訳に当たり、定期的にネット会議を開催した。その結果、2012年度に共訳書『ピーボディ姉妹』(南雲堂)を出版する運びとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
英米の女性思想家・女性作家のうち、チャイルドに関しては、辻がチャイルドの『ニューヨークからの手紙』(1843)をアメリカ旅行中のチャールズ・ディケンズの手記『アメリカ紀行』(1842)と比較し、両者の国籍やジェンダー、社会的立場の違いとどう関係しているのかを探った。『ニューヨークからの手紙』は、チャイルドが奴隷解放運動の機関紙『ナショナル・アンチ・スレーバリー・スタンダード』の編集長を務めるために1841年に、ニューヨークに移動し、本機関誌に執筆したコラムを編集したものである。チャイルドが奴隷制にとどまらず多くの社会問題を抱えたアメリカの都市に、独特の戦略でメスを入れ、読者に提示していることがわかる。 ピーボディ姉妹のメアリーに関しては、倉橋がメアリーの『フォアニータ』を研究した。本書は、メアリーが1833年から1835年にかけて滞在したキューバにおけるキューバの奴隷制をテーマとしている。メアリーが小説の形式ではあるが、キューバとアメリカの自由州との差異や奴隷制そのものの非人道性、残虐性、非生産的な面を明らかにしていることがわかった。 さらに、ピーボディ姉妹のうちのソファイに関しては、城戸がホーソーンとの比較から両者のイタリアに対する見解の相違がわかった。また、ホーソーン『大理石の牧神』の分析も行った。 また、倉橋、辻、城戸によるThe Peabody Sisters(Houghton Mifflin Company)の翻訳に関して、城戸は著者との連絡により、ピーボディ姉妹の生きた時代背景への認識を深め、翻訳に反映した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に引き続き、国内外で資料を入手し、解読を行う。 倉橋洋子は、メアリー・ピーボディがキューバでの経験から抱いた奴隷制度や教育に関する思想をさらに研究する。また、ホレス・マンとの親交や結婚後の影響関係を考察する。さらに、エリザベスの幼稚園設立がアメリカ社会に与えた影響を研究する。 辻祥子はマーティノーやチャイルドの著作や資料をさらに収集し、解読を行い、チャイルドの著作へのイギリスの影響を研究する。さらに、彼女の奴隷、先住民、女性に対する思想に彼女の環大西洋の思想家との交流が与えた影響を探る。 城戸光世は、ストウのフェミニズム的思想とドメスティック・イデオロギーの関係、ナサニエル・ホーソーンに通じるピューリタン的抑圧への非難などを明らかにする。 三者は定期的にスカイプ会議を開催し、研究の進捗状況を報告するとともに、研究に関する意見交換を行う。成果は、それぞれ国内での学会において口頭発表する。その後に学会誌に投稿する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度に使用する予定の研究費は、パソコン、図書費用、アメリカの図書館におけるピーボディ姉妹の手紙のコピー代等が当初の計画より安価であったために生じた。 3人の研究者は、それぞれハリエット・マーティノー、マーガレット・フラー、ピーボディ姉妹、リディア・マリア・チャイルド、キャサリン・セジウィック等の書物を購入し、海外の図書館から資料等を入手する予定である。 さらに、学会での口頭発表、資料収集、打ち合わせのために出張する予定である。 加えて、原稿投稿費用、原稿チェックのための人件費、文具等の費用を必要とする。
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Research Products
(1 results)