2012 Fiscal Year Research-status Report
十九世紀アメリカにみる女性思想家・作家たちによる環大西洋交流の社会的・文化的影響
Project/Area Number |
23520339
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Research Institution | Tokai Gakuen University |
Principal Investigator |
倉橋 洋子 東海学園大学, 経営学部, 教授 (10082372)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻 祥子 松山大学, 人文学部, 准教授 (60299360)
城戸 光世 広島大学, 総合科学研究科, 准教授 (10351991)
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Keywords | 環大西洋交流 / 女性思想家・作家 / 奴隷制 / 19世紀アメリカ社会 / 旅行記 / 中南米 |
Research Abstract |
本研究の目的は、環大西洋交流により英米の女性思想家・女性作家たちが、奴隷制、女性の権利、教育、及び先住民の問題等の社会問題を内包していた19世紀アメリカ社会に与えた社会的・文化的影響を明らかにすることである。 倉橋 洋子は日本ナサニエル・ホーソーン協会第31回全国大会(2012年5月25日於日本大学)のワークショップ「ピーボディ姉妹とホーソーン―ヨーロッパと中南米への視座」において司会兼講師を務め「メアリーのキューバ体験にもとづく『フォアニータ』について」を発表した。さらに、上記の発表を発展させ、「『フォアニータ』にみる19世紀のキューバにおける奴隷制とカースト」『東海学園大学研究紀要』第18号を発表した。また、日本ナサニエル・ホーソーン協会東京支部12月例会(読書会:Megan Marshall, The Peabody Sisters (Houghton Mifflin Company)にてコメンテーターを務めた。 辻 祥子は、昨年の研究成果をまとめ、「二つの迷宮をさまよう女性――チャイルドの『ニューヨークからの手紙』」『カウンターナラティヴから語るアメリカ文学』(音羽書房鶴見書店,2012年)を発表した。本研究は貧困や奴隷制に目を向けたチャイルドとチャールズ・ディケンズとを比較している。 城戸 光世は、日本ナサニエル・ホーソーン協会第31回全国大会のワークショップにおいて講師として「Notes in England and Italy―旅行記作家としてのSophia Peabody Hawthorne再評価」を発表し、新たなアメリカ・ルネサンス研究の可能性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
英米の女性の思想家・作家のうちメアリー・ピーボディに関して、倉橋 洋子は、メアリーがソファイア・ピーボディとともに1833年から1年半滞在したキューバの奴隷制を体験したことにより奴隷制反対の見解を抱き、『フォアニータ』や「キューバジャーナル」でそれを表明していることを明らかにした。また、メアリーがホーソーンに進言した奴隷制のテーマは、ホーソーンの作品において女性の隷属性のテーマと関連していることを示した。これらのことを口頭発表し、論文を執筆して発表した。マリア・チャイルドに関して、辻 祥子は、チャイルドがニューヨークからボストンの読者宛てに書いた『ニューヨークからの手紙』が、女性が都市を自由に闊歩できなかった時代に街や郊外を取材し、貧困や奴隷制等の社会矛盾に読者を向けさせ、共感を集めていくことを明らかにした。また、イギリスから渡米し、人気作家として熱烈な歓迎を受け、特権的にニューヨークの隅々を見て回れたチャールズ・ディケンズの手記と比較し、両者の視点や手法の違いを考察し、共著を出版した。ソファイア・ピーボディに関して、城戸 光世はソファイアのイタリア滞在を基に執筆されたイタリア旅行記とホーソーンの旅行記とを比較し、ソファイアの作家としての側面を示し、これに関して口頭発表を行った。 また、倉橋、辻、城戸によるMegan Marshall, The Peabody Sisters (Houghton Mifflin Company)の翻訳の出版に向けて校正を行った。ただ、城戸は平成24年度後半は、産休育休のため、その間国内外での資料収集や研究者同士の交流といった研究活動にほぼ従事できなかったのが残念な点である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に引き続き、国内外で資料を入手し、解読し、発表する予定である。詳細は以下の通りである。 倉橋 洋子は、奴隷制の見解に対して、メアリー、エリザベス、ソファイア・ピーボディの見解がホーソーン自身と彼の作品における見解とどのような影響関係にあるかを考察する予定である。特に経済的・性的に搾取された作品中の女性の表象に焦点を当てて考察する。辻 祥子は、ビクトリア朝のイギリス人作家のメアリー・エリザベス・バラッドンに焦点を当て、センセーショナル・ノベルの分野から、英米の接点を探る予定である。城戸 光世は、ソファイア・ピーボディの『キューバ日記』を取り上げ、アメリカ人の中南米への旅行の実態等の調査を進めるとともに、当時のアメリカと中南米との関係、超絶主義的な語り(ナラティヴ)の分析を行う予定である。 また、三者はトランスナショナルな活躍をした19世紀女性作家に関する論集の出版に向け、執筆と編集を行う予定である。さらに、Megan Marshall, The Peabody Sisters (Houghton Mifflin Company)の本年度中の翻訳書刊行を予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ピーボディ姉妹、メアリー・エリザベス・バラッドン等の書物を購入、国内外の図書館から資料等を入手する予定である。メアリー・エリザベス・バラッドンを中心とした資料収集のために渡英する予定である。出版の打ち合わせ、口頭発表等のために出張する予定である。また、論文のチェックをネイティブに依頼する。さらに、倉橋 洋子、辻 祥子、城戸 光世は、トランスナショナルな活躍をした19世紀女性作家に関する論集の出版をする予定である。
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Research Products
(4 results)