2012 Fiscal Year Research-status Report
世紀転換期における形而上的文化交流の形―岡倉天心とヴァージニア・ウルフの芸術観
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23520349
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Research Institution | Kobe Women's University |
Principal Investigator |
木下 由紀子 神戸女子大学, 文学部, 教授 (80214849)
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Keywords | modernism / japonisme / Virginia Woolf / Kakuzo Okakura / Roger Fry / cultural studies / aesthetics / fin de siecle |
Research Abstract |
Virginia Woolfと岡倉天心(覚三)との相関関係を探るにあたり、20世紀初頭の文芸誌にみる、イギリスにおける岡倉の受容の状況を調査。調査は、夏期と春期の研修期間を利用してそれぞれ1回の出張を通して、主に大英図書館にて行った。また、岡倉の英文著書の出版年を中心にWoolfの日記と書簡に目を通し、WoolfとWoolf周辺の知識人の日本および「東洋」への関心を探った。この調査の成果は紀要論文として発表したほか、日韓ウルフ学会において発表を行った。 論文および発表は以下のとおりである。 論文 "The 1910 Japan-British Exhibition at Shepherd Bush and the British Intellectuals' Interest in Japanese Art and Culture Observed in the TLS and the Athenaeum: Kakuzo Okakura, Roger Fry and Virginia Woolf in British Japonisme and Modernism." 神戸女子大学文学部紀要第46巻(2013):1-29頁 発表 "A Study for Far-Eastern Influences on Virgina Woolf: Okakura Kakuzo, Roger Fry and Virginia Woolf." The 2013 Japan-Korea Virginia Woolf Conference: "Reading Woolf in the 21st Century" at Doshisha University, Kyoto on 23 March 2013. The Proceedings:41-54.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Woolfをとりまくイギリス20世紀の知識人が19世紀以来続くジャポニスムの第二波を経験していたことを文芸誌の調査を通じて、ほぼ裏付けることができたと考える。Woolfと日本、あるいは岡倉との関連についても、日記と彼女の知的な交友関係からある程度の「証拠」となる事実を把握できたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
1)Woolfにおける岡倉の影響については、Roger Fryを知的介在者として位置付けることで、ある程度の説明が可能ではあるが、決定的な事実がまだ確認できていない。2)また、Fryをはじめとする、はっきりとジャポニスムの影響下にあった知識人が1930年あたりを境に、その影響について口を閉ざす。ここには、日本とイギリスとの政治的緊張関係が介在しているはずである。政治と文化思潮の相関関係を裏付けるには、1920-1930年、あるいは、第2次大戦開始に至るまでの期間における知識人の「東洋」に対する反応や知的態度を、文芸紙(誌)にあらわれた思潮を通じて分析する必要がある。3)さらに、岡倉に見る、英語圏の英文学者・哲学者の影響を確認する必要が他方で必要である。これは、英語圏の知識人の岡倉への関心が、彼の文化的・知的基盤が日本ばかりでなく「西洋」にあったことに由来しており、Woolfと岡倉の影響関係が「双方向的」であるという仮説を証明するための、一手段としての位置づけである。 今後の研究は上記の3点を念頭において行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ロンドン大英図書館への出張、国内では京都大学への出張、時間と予算が許せば、ニューヨーク公立図書館(Woolfの手書き原稿を所蔵)への出張を中心として、研究課題に引き続き取り組む。調査結果については、公表論文・学会発表によって、迅速な公表を心がける。
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Research Products
(3 results)