2011 Fiscal Year Research-status Report
大衆文化と19世紀アメリカ文学にみる視覚の変容に関する学際的研究
Project/Area Number |
23520350
|
Research Institution | Notre Dame Seishin University |
Principal Investigator |
中村 善雄 ノートルダム清心女子大学, 文学部, 准教授 (00361931)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 大衆文化 / アメリカ文学 / 視覚文化 |
Research Abstract |
本研究の目的は、19世紀のスペクタクルとしての大衆娯楽メディアに焦点を当て、アメリカ作家達の大衆視覚文化に対する言及や反応、あるいは彼らの作品に織り込まれた直接的あるいは比喩的レベルでの視覚文化の影響を包括的に検討し、大衆文化論の視座からの新たな文学の読みの可能性を探求することである。 上記の趣旨に沿い、国内にて英米文学及び文化関連学会に出席し、各大学図書館にて当該研究課題に関する書簡、伝記等の資料文献を収集した。また、夏季休暇を利用して、約2週間(8月上旬~8月下旬)にわたってパリ国立図書館やサント・ジュヌヴィエーヴ図書館といった公共図書機関を中心に19世紀後半のパリ万博やパノラマといった光学装置に関する一次資料の収集、及び光学装置に関する直接的理解を深めるための調査をパリで行なった。 研究成果としては、日本アメリカ文学会関西支部例会・ミニシンポジウムにて「電気のアルケオロジー― "In the Cage"にみる意識の変容と想像力」(2011年7月、於:神戸大学)と題した発表を、また日本アメリカ文学会全国大会シンポジウムにて「電灯、電信、スペクタクル―ヘンリー・ジェイムズ作品にみるテクノロジーの表象」(2011年10月、於:関西大学)と題した発表を行なった。 その他の研究成果としては、3編の共著図書、『笑いとユーモアのユダヤ文学』(南雲堂、2012年3月)『小学校英語活動マルチTips』(東洋館出版社、2011年12月)、『世界を歩く君たちへ―エッセーで触れる異文化の素顔』(遊行社、2011年12月)が上梓された。また、映画論「『ミケランジェロの暗号』―ユダヤ的ユーモアと動揺するアイデンティティ」『シュレミール』No.11(2012年3月発行)を執筆した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、国内主要大学図書館にて19世紀アメリカ文学関連の図書や研究書の資料文献を収集し、また夏季休暇を利用して、約2週間の間パリにてパノラマを始めとする光学装置やパリ万博に関する一次資料の収集、及び光学装置に関する直接的理解を深めるための調査・研究を実施した。それらの研究過程のなかで、日本アメリカ文学会関西支部例会ミニシンポジウムや日本アメリカ文学会全国大会シンポジウムにおいて、当該研究課題の一部を研究成果として公開することができ、当初予定された研究計画に対して一定の達成度は果たせたと思われる。しかし一方では成果発表に対して、疑問点や問題点が指摘されたので、それらをフィードバックしながら、現在論文を作成している。 また、今年度は当該研究課題の延長線上にあると思われる20世紀の娯楽メディア「映画」についても同時並行的に研究を推進したため、当該研究に対するエフォート率が若干低下したことは懸念される点である。(成果としては「『ミケランジェロの暗号』―ユダヤ的ユーモアと動揺するアイデンティティ」『シュレミール』No.11や『笑いとユーモアのユダヤ文学』)。しかしながらこの映画研究においても、当該研究が19世紀の大衆的視覚文化とアメリカ作家との関係性に焦点を当てた課題である性質上、19世紀のみならず20世紀を交えて視覚文化を包括的に捉える点では有益であったと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成23年度と基本的に同様の研究方針及び方法で課題を遂行していく予定である。具体的には、当該研究テーマに関するアメリカ文学作品及び大衆文化に関連する図書を購入し、また対象作家の視覚文化との関わりを歴史的側面から考察するため国立国会図書館及び国内主要大学図書館にて書簡、伝記等の資料文献を収集する。さらに国内で入手し難い光学装置に関する一次資料の収集及び光学装置に関する直接的理解を深めるために、夏季休暇を利用して、約2~3週間にわたって海外にて調査・研究を行う予定である。資料収集と同時に、作品解釈への視覚理論や文学理論の転用を検討し、論理性・客観性を有した論文作成を行なう。その過程において、アメリカ文学・文化関連学会にて研究発表を行い、そこで指摘された問題点や疑問点をフィードバックし、それらの指摘を踏まえて、論文執筆並びに共著図書の刊行という形で本研究課題の成果を公開する予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
設備研究備品費、消耗品費、旅費(国内、海外)、その他として研究費を使用する予定である。 設備備品費としてはタブレットPC等当該課題に必要と思われる電子機器を購入し、消耗品費としてはアメリカ文学関係図書及び視覚論・大衆文化関係図書費として使用する予定である。また、研究設備の維持及び向上のため、諸々の消耗備品を購入する。 旅費としては国内学会での発表や大学図書館等での文献収集のための国内出張、並びに夏季休暇を利用した海外調査・研究(約2~3週間を予定)を実施するために利用する。
|
Research Products
(6 results)