2012 Fiscal Year Research-status Report
大衆文化と19世紀アメリカ文学にみる視覚の変容に関する学際的研究
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23520350
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Research Institution | Notre Dame Seishin University |
Principal Investigator |
中村 善雄 ノートルダム清心女子大学, 文学部, 准教授 (00361931)
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Keywords | アメリカ文学 / 視覚文化 / 大衆文化 |
Research Abstract |
今年度は個人と視覚文化の関係性にみる眼差しの力学を中心的課題として取り組んだ。その研究趣旨に沿う形で、国内の英米文学及び文化関連学会に出席し、当該研究に関連する情報収集及び、意見交換を行なった。また、春季休暇を利用して、約3週間(3月上旬~3月下旬)にわたって、トランスアトランティックな研究視座を視野に入れて、ナサニエル・ホーソーンやヘンリー・ジェイムズ研究に関連するイタリア各所(ベネチア、フィレンンツェ、ローマ等)を現地視察し、特に視覚的資料となる素材の収集に努めた。 研究成果としては、共編著書『水と光―アメリカの文学の原点を探る』(開文社、2013年3月)と共著書『ヘンリー・ジェイムズ『悲劇の詩神』を読む』(彩流社、2012年11月)が上梓された。前者では前半部において、前年度の科研によるフランス研修の成果を取り入れながら、スペクタクルとしての世紀末都市パリに焦点を当て、後者においてはテクノロジーが人に及ぼす視覚的影響について研究成果を盛り込んだ。その他、2冊の共訳書『ヘンリー・ジェイムズ短編選集』(関西大学出版部、2012年10月)と『新イディッシュ語の喜び』(大阪教育図書、2013年3月)が出版された。研究発表としては、第26回異文化情報ネクサス研究会(CINEX)定例研究会(2012年8月、於:ノートルダム清心女子大学)にて「19世紀の大衆的視覚文化と眼差しの変容」と題して、本課題の概要及び進展状況を報告し、参加者との意見交換を行なった。その他、中・四国アメリカ文学会第41回大会(2012年6月、於:広島大学)のシンポジウム「笑いとユーモアのユダヤ文学」や、第3回異文化情報ネクサス研究会(CINEX)年次大会(2012年12月、於:共立女子短期大学)のシンポジウム「コミュニケーション・リテラシーの諸相-多価値な時代のアナログ知-」において、研究発表を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はパノラマやスコポフィリア、フラヌール、世界俯瞰、都市景観など、主として個人と大衆的視覚文化との結節点に生じる眼差しの力学に焦点を当て、中心的課題として取り組んだ。結果、当該研究に直接関係する共編著書『水と光―アメリカの文学の原点を探る』(開文社、2013年3月)と共著書『ヘンリー・ジェイムズ『悲劇の詩神』を読む』(彩流社、2012年11月)の2冊が上梓され、図書という形で成果公開を社会還元することができた。また間接的ではあるが、共訳書『ヘンリー・ジェイムズ短編選集』(関西大学出版部、2012年10月)が当該研究の副産物として上梓され、総じて一定の研究目的は達成できたと考えている。加えて、イタリア研修にて、対象作家となるナサニエル・ホーソーンやヘンリー・ジェイムズ研究に寄与すると思われる一次資料、特に視覚文化に関する資料を入手し、トランスアトランティックな視座からも後の研究を展開していく準備を進めていくことができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も前年度同様に、基本的には国内外の学会出席による情報収集と意見交換、および各研究段階で得られた成果の学会・研究会での発表、及び研究発表でフィードバックを行ない、更に推敲を重ね、図書あるいは学術雑誌への論文掲載という形で研究成果を公開していく予定である。 具体的には19世紀アメリカ作家(Nathaniel Hawthorne、Edgar Allan Poe、Henry James, Walt Whitman、William Dean Howellsなど)を対象に、以下の4つの観点、①各作家の大衆視覚メディアの受容形態、②光学装置を媒介とする作家のアメリカ表象、③大衆メディア装置が作家に及ぼす影響の比較考察、④光学装置の発明に伴う19世紀の視覚の変容といった点から、これまでの各研究成果を比較検討し、最終的には19世紀の大衆的視覚文化と文学作品の学際研究として纏めあげることを目的としている。また、次年度は研究最終年度でもあり、研究成果の社会への還元と公開という観点から、19世紀アメリカ文学における大衆視覚メディアの影響に関する図書を刊行していくことを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費については、前年度同様に、主として消耗品費(研究関連図書及び研究維持のための機器や消耗品)、旅費(国内学会・研究会参加旅費、海外研修旅費「夏季あるいは春季休暇期間中にアメリカを予定」)に使用する予定をしている。但し、大学研究室で使用しているデスクトップ・パソコンが老朽化しており、予算の執行状況に余裕があれば、パソコン購入のために設備備品費を計上することもあり得る。 次年度使用額として41,348円が繰り越されたが、その理由は以下の通りである。平成25年度の支払請求額として70万円が予定されているが、当該年度の予算執行計画を実行に移すと、海外視察に必要な旅費が不足することが予想され、不足分に対する充当として41,348円を繰り越すこととした。しかしながら、次年度使用額は研究計画自体に変更を強いるものではなく、当初から予定している研究計画をできうる限り遵守するという方針による措置である。
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Research Products
(7 results)