2011 Fiscal Year Research-status Report
日本アニメーションの翻訳分析による,視聴覚メディア・テクストの特性の研究
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23520355
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Research Institution | Kurashiki City College |
Principal Investigator |
安達 励人 倉敷市立短期大学, その他部局等, 教授 (60249555)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | アニメーション / 翻訳 / 視聴覚メディア / AVT |
Research Abstract |
本研究は,日本のアニメーション映画の吹き替え翻訳を対象に,多重コードテクストとしての視聴覚メディアの翻訳の特徴を明らかにすることを目的としている。この目的に即した平成23年度の研究成果は,以下の3点である。第1に,音声セリフから成る2言語並列コーパスの作成をほぼ終了した。第2に,同データに基づいて主要作品の多重コードを書き起こし,日米アニメーション映画の翻訳のありようを記述的な方法を用いて比較・分析した。第3に,言語情報とその他のコード情報(パラ言語・視覚的要素・音響・編集)とを併用して扱うことができる多重コードデータベースの構築を模索中である。 具体的な成果の一部を2本の論文にまとめた。"Characteristics of Animation Text"では,アニメーションを実写と比較し,映像や音響とテクストとの関係や,観客層が翻訳の内容や形式へ及ぼす影響について考察した。次に,"A Diachronic Comparison of the English Translations of Hayao Miyazaki’s Animated Works"では,宮崎駿の映画を題材に,多重コードの共時的分析結果を通時的比較に応用する試みを行い,翻訳規範の変化と,日米の翻訳姿勢における言語文化的な不均衡について考察した。 研究成果の意義は,次の2点である。まず,2言語並列コーパスを使った共時的分析モデルを得たことで,アニメーションテクストの通時的分析に応用する可能性が開けた。翻訳規範は時代と共に変化していくことから,翻訳の通時的分析モデルの構築は不可欠である。さらに,同コーパスを多重コードデータベースに発展させることで,翻訳研究と映画研究との接続を容易にすることが期待できる。映像や音楽の特性をふまえたアニメーションテクストの研究は,視聴覚翻訳の可能性を広げ得ると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず,アニメーション映画の多重コードの書き起こしに関しては,予定していた作品のデータ化をほぼ終了した。ただし,コーパスの汎用性を高めるうえで,コンテンツをさらに増やす必要があるため,今後も作業を継続する。 次に,映像テクストの多重コード・データベース(マルチメディア並列コーパス)の構築は,デザインの検討段階である。企画がまとまり次第,早急に着手する予定である。 一方,平成24年度に予定していた。通時的分析モデルの構築については,すでに研究を始めている。具体的な成果も得ることができており,計画よりも研究が進んでいる状況にあると言える。したがって,全体的には,おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は,映像テクストの多重コード・データベース(マルチメディア並列コーパス)のデザインを実用レベルに整理し,早急にデータベースの構築作業に着手する。そして,年内に試作品を完成させる。 同時に,データベースを用いながら,通時的な視点からの事例の集積に取り組む。日米のアニメーションの原語版とファンダブを含む翻訳版とを各コード単位で比較し,シーンを最小単位とした差異分析を試みる。特に,日本的風物やタブーの壊乱,表現スタイル等,日本のアニメーションに特徴的であると考えられる要素を軸に多重コードテクストの翻訳のありようを検証し,どういう規範のもとに,どのように翻訳が行われ,それが観客にどう受容されているかについて考察する。 これによって得られた分析結果を,過去の研究成果と合わせて論文等の刊行物にまとめる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
まず,物品費として,データベース構築のための機器類(ソフトとバックアップ用のハードディスク)の整備と,関係書籍の購入が必要である。次に,旅費として,主に研究成果を発表するための学会出張を予定している。また,人件費・謝金として,データベース構築のための基礎データの入力・点検や,執筆した英語論文の英文チェックのための経費が必要である。また,研究成果をまとめた冊子や論文等の刊行に要する費用の支出も見込んでいる。
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Research Products
(2 results)