2012 Fiscal Year Research-status Report
ロドルフ・テプフェールにおける物語技法と領域横断的表現の関係
Project/Area Number |
23520362
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
森田 直子 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (40295118)
|
Keywords | ロドルフ・テプフェール / スイス・ロマンド文学 / 絵物語 / 物語メディア / 観相学 |
Research Abstract |
19世紀前半のジュネーヴの作家ロドルフ・テプフェールが制作した絵物語(版画物語)の、領域横断的メディアを生かした物語技法の解明が本研究の目的である。比較的先行研究の多い社会文化史の観点よりも、テクスト分析、物語展開におけるユーモアと風刺性の創出方法に重点をおいている。 24年度は、23年度におけるテプフェールの身ぶり表現の問題を具体的に論じるため、晩年の傑作『アルベール物語』(1845)における物語技法を分析した。本作は、もともと特定のモデルを想定した物語であるため、性格喜劇およびカリカチュアの要素と、人物の内面をより重視した近代小説的要素の混在が見られる。その他、人物の「見かけ」による物語の牽引、図像による修辞的表現、キャプションと図像のずれによるユーモアなど、それまでに開拓した版画物語の技法の集大成を確認することができる。また『アルベール物語』の結末の扱いが他の作品と異なっていることから、今後他の作品の分析との詳細な比較が必要であることがわかった。 身ぶり表現と並んでテプフェールの詩学の基本原理となっている「観相学」についても『観相学試論』(1845)翻訳と解題の作成を通じて考察し、初版の復刻と合わせて刊行することができた(平成25年4月刊行)。また、3月のジュネーヴ図書館での「ある実施要綱に関する考察」(1836)および『観相学試論』草稿の調査により、理論と応用の関係についてのテプフェールの思考過程の一端を明らかにすることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
版画物語七作品のテクスト分析および翻訳は予定通り進行している。 カリカチュアとサタイア文学の系譜のなかの位置づけをたどる作業については、24年度のうちに予定していた研究協力者との打ち合わせが25年度にずれこんだが、25年度の早い時期に実現する予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
本課題の最終年度であるので、テプフェールの絵物語全七作の領域横断的表現および物語技法について、総合的な分析を進める。その際、1832年ごろまでの彼の旅行記、美術批評、戯曲に見られる大胆な表現手法とのかかわり、およびジュネーヴの文化的風土にも留意する。 また、喜劇的メカニズムの構成法、性格劇や寓話の伝統との関連を、モリエールやラ・フォンテーヌ、フロリアンのテプフェールへの影響という観点から明らかにする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「次年度使用額」が生じた主な理由は、上述の研究協力者との打ち合わせの準備が予定通りに進まなかったことにある。 当初24年度後半に予定していた打ち合わせを25年度の早い時期に実現する予定である。 そのための経費を平成25年度請求額とあわせて使用する計画である。
|
Research Products
(5 results)