2013 Fiscal Year Annual Research Report
ロドルフ・テプフェールにおける物語技法と領域横断的表現の関係
Project/Area Number |
23520362
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
森田 直子 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (40295118)
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Keywords | ロドルフ・テプフェール / スイス・ロマンド文学 / 絵物語 / 物語メディア / 観相学 |
Research Abstract |
19世紀前半のジュネーヴの作家ロドルフ・テプフェールが制作した絵物語(版画物語)の、領域横断的メディアを生かした物語技法の解明が本研究の目的である。比較的先行研究の多い社会文化史的観点よりも。テクスト分析、物語展開におけるユーモアと諷刺性の創出方法に重点をおいている。 25年度は、テプフェールの物語技法の根幹をなす、顔・しぐさの視覚表象と物語の統辞法との関連について研究をすすめ、3年間の研究のまとめの作業に集中した。まず、テプフェールの絵物語の詩学において基本原理となっている「観相学」について『観相学試論』(1845)の翻訳と解題を4月に刊行した。その後、美術・修辞学・演劇・文学研究方面からのアプローチを統合した結果、テプフェールが現実の顔を描くという意識から、顔図像の自律的表現への決定的転換を観相学の系譜にもたらした背景が以下のようにまとめられることがわかった。すなわち、①テプフェールがカリカチュア的描線を美学的観点から擁護した点、②18世紀イギリスにおけるキャラクター(小説や戯曲の登場人物)の自立(別作品での再利用等)という現象におそらく彼が親しんでいたこと、③感情表現の視覚的レパートリーの広範囲の普及である。 25年3月までにこれらの研究成果の刊行は間に合わなかったが、2か所で口頭発表を行い、細部にわたってピア・レヴューを受けた。また、テプフェールの研究史上重要な、グルンステンとペータースの『マンガの発明』(原著1994)の翻訳を、その後の研究の進展を盛り込んだ形で刊行することで、成果の一部をすでに公開した。
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