2012 Fiscal Year Research-status Report
『パンセ』と『キリスト教護教論』―パスカルの著作の意味と価値
Project/Area Number |
23520366
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
塩川 徹也 東京大学, 大学院人文社会系研究科, 名誉教授 (00109050)
|
Keywords | 国際研究者交流 / フランス / パスカル / 『パンセ』 / キリスト教護教論 / 編纂史 / 受容史 |
Research Abstract |
・白百合女子大学大学院でのオムニバス講義で、2回にわたって、『パンセ』がどのように編纂され、また受容されたかを概観することを通じて、その意味と価値を考察した(11月13日、20日)。 ・パリ・ソルボンヌ大学とポール・ロワイヤル友の会共催の国際シンポジウム「パスカルの護教論再読」(10月3日~5日)で、原罪の教義が護教論の目標と論証において果たした役割に関する研究発表を行うとともに、多くのパスカル研究者(ジャン・メナール、フィリップ・セリエ、ドミニック・デコット、ジェラール・フェレロル、ロラン・ティルワン、ヴァンサン・カロー、マリア=ヴィタ・ロメオ、エレーヌ・ミション、ロラン・スュジーニ)と意見交換を行った。 ・フランス17世紀学会が、パスカル没後350年を記念して開催した国際研究集会で「『パンセ』における愛と正義」と題する招待講演を行うとともに、欧米のパスカル研究者たち(ジャン・メナール、フィリップ・セリエ、ジェラール・フェレロル、カルロ・オッソラ、ジョン・ライオンズ、ロラン・メイネ、ジャン=ルイ・クレチアン、ロラン・スュジーニ)と意見交換を行った(10月27日)。 ・「〈私〉とは何か」という問いにパスカルとデカルトがどのように答えたかを詳細に検討することを通じて、両者の思想の相違とその意味を考察した論考を、『デカルト哲学をめぐる論戦』(京都大学学術出版会)と題する論文集に寄稿した。 ・「ロベール・シャールの論敵パスカル」と題するフランス語の論文で、パスカルの護教論、とりわけその基盤となる原罪の思想に強い非難の言葉を浴びせたシャールとの対比で、パスカルの護教論の意味と価値を考察した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
パスカルの著作、とりわけ『パンセ』の意味と価値を考えるという目標に関連する研究は順調に進展し、少なからぬ成果が挙がった。とりわけデカルトとロベール・シャールという二人の哲学者・思想家との対比を行うことを通じて、パスカルの思想と著作の特徴をよりよく捕らえることができるようになった。ただし昨年度同様、研究代表者のパスカル解釈の問題に力点を置いたため、18世紀以降の受容史に深入りする余裕がなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
著作の意味と価値の問題は、これまで得られた成果を踏まえて研究を続ける。受容史については、テーマを何人かの哲学者(ロック、マルブランシュ、ライプニッツ、ルソーを候補として考えている)のパスカル受容に絞って探究を進める。最後に、この3年間の研究の暫定的な成果を、『パンセ』の解説の形でまとめたい。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
|