2012 Fiscal Year Research-status Report
フランス植民地主義時代の旅行記におけるエキゾチシズムの諸相
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23520367
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Research Institution | Kyoritsu Women's University |
Principal Investigator |
田口 亜紀 共立女子大学, 文芸学部, 講師 (90600502)
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Keywords | フランス / 植民地主義 / エキゾチシズム / フランス・ジャポン |
Research Abstract |
エキゾチックなものへの憧れが集団心性として、「イズム」の形を取るのは19世紀であるが、過去への夢想ともいうべき懐古趣味と併行する、遠方への夢想ともいうべき異国趣味(エグゾチシズム)の流行が、植民地主義・帝国主義の時代と軌を一にしていることに本研究は注目した。 19世紀から20世紀前半にかけて、フランスは文明化の使命というイデオロギーを旗印に植民地を拡大していく一方、異文化への関心を深めていく。そこで、植民地主義時代の文化的かつ政治的潮流を念頭に置き、フランスにおけるエキゾチシズムの変遷を跡づける作業をおこなった。 本年度は、このような19世紀から20世紀前半の帝国主義的状況において、直接的な利害関係を持たないフランスと日本の文化的関係に着眼した。この2国が互いの文化に魅せられ、刺激を受けたという事実は、たとえば『フランス・ジャポン』という文化交流雑誌の活発な活動によって裏付けられる。その際、フランスと日本の文化的かつ政治的交流において、エキゾチシズムがいかに発露し、異文化理解の原動力になっているかを考察した。その成果は、「『フランス・ジャポン』の政治学 1934―1945」内「「フランス・ジャポン」の日本人執筆者」と題する論文に発表した。(『満鉄と日仏文化交流誌「フランス・ジャポン」』(和田桂子、松崎=プティマンジャン・碩子、和田博文 編、ゆまに書房、和田桂子監修による『フランス・ジャポン』の復刻版別冊所収)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、植民地主義時代にフランス語で書かれた旅行記において、エキゾチシズムの表出を跡づけ、この概念の変遷を明らかにし、異文化理解の可能性を探ることを目的とした。フランス文学におけるエキゾチシズムの変遷を跡づけるために、基本文献資料のリストの作成に取りかかり、入手可能なものは購入した。資料を検討し、読解作業にあたった。 他者に魅了される側面と同時に、他者への同化の欲望が見いだせる文献に対し、このアンビバレントな欲望は、他者理解にどのように作用するのかを探ったのであったが、この点に関しては、さらなる考察が必要であり、次年度以降の課題となるだろう。特に、ヴィクトル・セガレンが提唱するエキゾチシズムが、彼自身の小説にどのように現れているのかという問題提起についても、さらなる検討を要する。 また、19世紀から20世紀前半に発表された主要な旅行記と研究書の書誌をリストアップし、コーパス選定に専念した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、植民地主義とエキゾチシズムに関連する書誌を完成させ、読み込み作業を進める。特に、文献の検討作業を行い、欠落している文献の調査・収集を行う。テキストを精読し、研究対象作品に描かれる他者認識を分析し、研究の進んだ段階で、研究対象をパノラマ的展望の下に置く。 「研究の目的」に設定した、他者に魅了される側面および、他者への同化の欲望が見いだせる文献に対し、このアンビバレントな欲望は、他者理解にどのように作用するのか、という問題に答えるべく、さらなる分析を行い、研究結果をまとめる予定である。 そして研究の鍵となる、ヴィクトル・セガレンのエキゾチシズムが彼の小説にどのように現れているのかという問題提起について、フランスでの最近の研究動向にも注目し、考察を進める。 最終的に、批評的論点に照らし合わせて得られた結果を総括・論述し、打ち立てた研究課題に対する研究結果を学術雑誌に発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
文献の検討作業を行い、欠落している文献の調査と収集を行うが、資料がフランス国立図書館に所蔵されていることから、フランス国立図書館での資料調査と文献収集を行う。そのために、2013年8月に行うフランス出張の旅費として研究費を使用する。 その他の項目として、必要な研究資料を購入するために、物品費として研究費を使用する。 "Une Histoire Buissonniere de la France", (Robb, Graham, Flammarion Lettres 2011/08)、"Une Histoire de Paris par ceux qui l'ont fait", (Coll. Champs Histoire, Robb, Graham, Flammarion Lettres 2012/01) 、『植民地独立の起源―フランスのチュニジア・モロッコ政策』(池田亮著,法政大学出版局 、2013.2)などのフランス19世紀~20世紀の歴史関連の書籍もあわせて購入する。
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