2012 Fiscal Year Research-status Report
「16世紀絵入り年代記集成」の文献学・図像学的研究
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23520374
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
中澤 敦夫 富山大学, 人文学部, 教授 (90242388)
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Keywords | 年代記 / 挿画 / テキスト学 / ロシア中世 |
Research Abstract |
平成24年度の研究では、前年度に作成した基礎データを用いて、「16世紀絵入り年代記集成」のテキストおよび挿画の分析を行い、作業を進めながら研究の方向性を明らかにすることを目指した。 テキスト研究については、「階梯書」(ステペンナヤ・クニーガ)の研究がロシアで現在進行中であることから、前年度に作成した「階梯書」の電子データを用いながら、研究文献の内容を検討していった。その結果、この文献のテキスト史(典拠やその展開)はかなり解明されていることが分かり、「16世紀絵入り年代記」との関係も明らかにするメドがついてきた。さらに、「年代記集成」のテキスト形成の問題については、平成24年夏にミンスクで行った年代記関係の資料調査が役に立った。 挿画研究については、「年代記集成」におけるイコン的な図像の働きの重要さが明らかになり、挿画における「イコン」という課題が浮上してきたところである。そのため、中世のイコン(聖像画)に関する研究を並行して行い、部分的にはその成果を『暮らしの中のロシア・イコン』という著書によって公表することができた。今後、これを発展させて「歴史の中のロシア・イコン」という大きな問題を設定し、「年代記集成」をを資料に解明していくことを現在検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、年代記の歴史記述の方法の問題については、間接的ではあるが、台湾での学会報告を行い、その内容をもとに、富山大学の紀要にカラムジンの歴史観について論文を書いた。これによって、年代記の文献研究を進めることができた。また、図像については、今後の研究について具体的なテーマを設定することができ、方法論について著書を完成することもできた。
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Strategy for Future Research Activity |
年代記テキストの文献学的な研究については、対象が厖大で、先行研究が少ないため、ようやく研究の方向が見えてきたところであり、これをコンスタントに続けていきたい。挿画の図像学的研究については、平成24年度に得ることができた「イコン」と歴史との係わりの問題設定を展開していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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