• Search Research Projects
  • Search Researchers
  • How to Use
  1. Back to project page

2012 Fiscal Year Research-status Report

16世紀後半~17世紀のイタリアの詩論における「模倣」と「想像」の関係について

Research Project

Project/Area Number 23520376
Research InstitutionOsaka University

Principal Investigator

村瀬 有司  大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (10324873)

Keywordsイタリア文学 / 詩論 / 16世紀イタリア
Research Abstract

2012年度の研究では、16世紀後半の文人ヤーコポ・マッツォーニの創作理論をさらに検証した。彼は「ソフィスト」や「空想」といった用語を肯定的に使用しているために、同時代の詩人タッソから批判されている。この点をより正確に検証するために、マッツォーニのテキストを精査しながら、まず彼の創作理論の前提として、詩が「模倣」である、つまり「像」「似姿」を作るものであるという考え方を確認し、次いでこの「像」「似姿」をつくるにあたって人間の「知性」と「空想」(fantasia)が駆使されること、詩人は「像」の再現を通じて聴衆に具体的かつ説得的に内容を伝達できること、さらに、この「像」によって相手を説き伏せるという点で詩人が「古代のソフィスト」に類似するという考え方を確認した。マッツォーニは、この「信じてもらえること」(il credibile)という特徴を、詩の本質の一つと見なしている。タッソにおいて詩の本質と見なされていた「本当らしさ」という用語が、マッツォーニにおいては、より修辞的な意味合いの濃い「信じうること」という用語に変化しているのである。またマッツオーニが使用する「像」「ソフィスト」という用語の意味が、タッソが使うそれらと文脈並びにニュアンスにおいて異なるという点が、マッツォーニに対する批判の一因となっている点を明らかにした。
さらに、マッツォーニの創作理論が及ぼした影響として、グアリーニの詩論を検証した。グアリーニは「信じがたいことを、説得的に描き出す」ことを詩人の務めと考える。タッソの「本当らしさ」からマッツォーニの「信じうること」、グアリーニの「説得」へと至る用語の変遷を追いながら、その対立概念である「驚異」「信じがたいこと」「不可能なこと」の具体的な意味とそれらを表現する詩人の想像力、並びに想像と模倣の関係について整理を開始した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

2012年度は、「模倣」と「想像」の問題を言語と修辞の観点から考察することが一つの目標となっていたが、この点については以下の理由から検証の進度が遅くなっている。
当該年度においてマッツォーニの創作理論並びにその影響を受けたグアリーニの詩論を検証したが、この研究から、16世紀後半の段階で、本研究が当初想定していた以上に大きな変化がイタリアの詩論に萌していたことが明らかになってきた。「模倣」という方法論を基本としながらも、詩人自らの「想像」や「才知」を「模倣」以上に重視しようとするこの創作理論のトレンドの変化は、どのような経緯から、いかなる理由で生まれてきたのか。この点を、対抗宗教改革という歴史的背景を踏まえながら考察することが、「模倣」と「想像」の変遷を考える上で、また両概念と密接に結びついた詩人の言語観・修辞観を把握する上で重要になる。本年度はこの問題に関して、マッツォーニとグアリーニに関連するテキストを新たに調査し始めたために、作業に遅れが生じる結果となった。

Strategy for Future Research Activity

2013年度は、16世紀後半のイタリアの創作理論にあらわれ始めた詩人の「想像」「創意」「才知」を重視する傾向を踏まえ、そのような傾向が詩人の言語観・修辞法にどのような変化をもたらしたかを考察する。具体的には、17世紀イタリアの重要な修辞論であるエマヌエーレ・テザウロの『アリストテレスの望遠鏡』を検証しながら、事物-概念-言葉の関係に着目しつつ、問題を整理・検証する予定である。個々の詩作品ではなく、それらを統括する理論に着目しながら、問題点を効率的に検証していく。
17世紀バロック時代の詩の特色は、読者に「驚き」をもたらすような表現・修辞が好まれたという点にある。この「驚き」をもたらす修辞技法として、テザウロは、例えば、思いがけない類似性を明らかにするような比喩や、普段使用されていない言葉・表現の使用を挙げている。そしてテザウロは、前者に関連して、何の関係もない2つのもののなかに潜在する密かなアナロジーを見抜く力を、詩人の才知・才能として高く評価している。この種の驚きをもたらすような新奇な比喩の賞賛は、確かに詩人の想像や創意の評価へとつながるものであるが、一方で、比喩を成立させている類似性が、相異なる2つの存在のなかにきちんと存在しているという点で、無いものを有ると偽る嘘や、事物そのものの性質を歪める虚偽とは一線を画している。ここでは、事物-概念という関係が損なわれているのではなく、一般に知られているのとは違うパターンで提示されていることが問題となるだろう。
このようなテザウロの言語観・修辞観を検証しながら「模倣」「想像」と言語の関係を理論面から検証する予定である。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

24年度に発注していたイタリア書籍の一部が、年度内に到着しなかった。これについては25年度に購入したうえで、本年の研究計画と合わせて調査を行う。

  • Research Products

    (1 results)

All 2013

All Book (1 results)

  • [Book] デイリーコンサイス伊和・和伊辞典2013

    • Author(s)
      藤村昌昭監修
    • Total Pages
      1376
    • Publisher
      三省堂

URL: 

Published: 2014-07-24  

Information User Guide FAQ News Terms of Use Attribution of KAKENHI

Powered by NII kakenhi