2011 Fiscal Year Research-status Report
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23520378
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
ディソン アニエス 大阪大学, 文学研究科, 外国人教師 (90543489)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | フランス現代詩 / 超現代 / アンヌ・ポルチュガル / ジャック・ルーボー / シュザンヌ・ドッペルト / 関口涼子 / バイリンガリズム |
Research Abstract |
当初私が掲げた研究課題は、フランス現代詩の歴史的背景、ならびに技術的特徴を探究し、20世紀末から21世紀初頭におけるその進展の具体的な事象(諸流派、相互の影響関係、共通性と差異)を考察すること、さらには、フランスで用いられる「超現代」という学術的概念を明確に規定することであった。 科研費を得られたおかげで、2011年度はきわめて満足のゆく研究成果を得ることができた。とりわけ、フランスの「超現代」詩という概念について、ひとつの結論的な定義を導くことができた。日本およびアメリカ合衆国でいくつかのシンポジウムに参加し、論文およびエッセーを数本ずつフランスで刊行した。フランス国立図書館(2011年7月~8月)、カリフォルニア大学(UCLA、2012年3月)、サンフランシスコ大学(2012年3月)にて集中的な学術調査を行い、アンヌ・ポルチュガルをはじめとするフランス現代詩人についての講義とセミナーを担当した(サンフランシスコ大学)。私の主たる目的は、フランス超現代詩人たちが、逆説的にも、いかに伝統的な詩の模範から影響を受けているかということを強調することにあった(たとえば、ジャック・ルーボーの創作は日本の中世詩を源泉としている)。他方で彼らは、バイリンガリズム(関口涼子は日仏両語で創作を行う)、映像と写真(シュザンヌ・ドッペルト)、細胞生物学、エコロジー、植物学などの最先端科学の知見といった、斬新な素材を詩作に用いているのである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
私の研究計画は、詩における「超現代」という概念の基準を(「近代性」「前衛」という概念との対比において)確定すること、ならびに、1980-90年代にフランスにおいてそれらが勃興してきた歴史的・文化的背景を探究することにあった。したがって私は、1)この新しい詩の潮流が、伝統に対してとる逆説的な関係(こうした傾向は、直前の前衛詩人世代が好んだ伝統の「無化」と際立った対照を見せている)、2)「超現代」詩人が、その創作に際する材料として、多言語および学術諸分野(神経科学、細胞生物学、写真、造形芸術)へと向ける関心に着目した。フランスおよびアメリカにおける図書館での調査(文芸雑誌、理論的著作)と、シンポジウムやインタビューを通じた詩人や研究者たちとの交流は、私の研究の進展に顕著に貢献した。
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Strategy for Future Research Activity |
2012年度においては、上で述べた枠組みを土台にして、「超現代詩人」という呼称によって、一見したところきわめて多様な詩人たちを統合される集団の、個々の創作手続きや、共通の特徴について考察し、それらを整理して提示したい。そのために、主として次の三つの主題に取りかかる。 1)彼らと過去の遺産との関係(継承か破壊か)。 2)彼らが採用する個々の創作手続き(断章性、多声性、非人称性、ジャンルの混淆など)。 3)彼らの作品に共通する難解さ――その歴史的な諸原因および、理論的背景。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2012年度は、超現代詩を代表するフランスの代表的作家(ジャック・ルーボー、アンヌ・ポルチュガルなど)を日本に招待し、講演、朗読会を企画することを通じて、日本の作家・詩人および研究者との交流を図る予定である。科研費は、彼らの旅費、滞在費(各人一週間程度)、最低限の報酬に充てられる。残額は、私の研究旅費(フランスその他の海外)および、研究書籍、パソコン周辺機器、文房具の購入に用いる。
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Research Products
(5 results)