2012 Fiscal Year Research-status Report
18世紀中葉におけるライプツィヒ派の演劇改革とザクセン喜劇の生成および受容
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23520386
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
小林 英起子 広島大学, 文学研究科, 教授 (60571065)
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Keywords | ザクセン喜劇 / ノイバー座 / レッシング / 道化役 / 演劇改革 / 啓蒙の寓話 / 移動劇団 |
Research Abstract |
2012年度は、ザクセン喜劇の受容の諸相とその時代の代表的劇団ノイバー座の活動についての調査や、収集した資料を読破、解析することに重点を置いた。 8月19日~8月24日、中国の北京にて開催されたアジア・ゲルマニスト会議に参加し、8月19日司会を務め、8月24日には口頭発表を行なった。 9月12日~9月23日、ドイツのヴォルフェンビュッテルとライプツィヒ、カーメンツおよびケルンにおいて、現地調査と文献収集を行なった。ヴォルフェンビュッテルの図書館では、演劇史の資料を紐解き、必要な文献を収集した。当時の文学新聞のマイクロフィッチも閲覧し、複写した。ザクセン州カーメンツのレッシング博物館も訪ね、初期レッシングの喜劇とノイバー座との関連やその一座の移動劇団としての活動について示唆を受けた。 8月19日にはノルトライン・ヴェストファーレン州のデューレン=ユーリッヒ・クラブの招きを受け、ユーリッヒ市のカイザーホーフにて、最近の研究成果から講演を行なった。ドイツのロータリー・クラブの人々より多くの反響があり、質疑応答も活発であった。11月10日、日本独文学会中国四国支部研究発表会(於 広島大学)においては、ノイバ―座の活動と演劇改革について口頭発表を行なった。 論文「啓蒙の動物寓話における擬人化(2) ―G.E.レッシングの『寓話』と翻訳によるS.リチャードソン作『イソップ寓話』との比較考察」が「広島大学大学院文学研究科論集」第72巻、75頁~88頁に掲載された。また、論文 Ein fremdes Bild fuer Freundschaft bei C.F. Weisse: Die "edle Wildin" in "Die Freundschaft auf der Probe" がアジア・ゲルマニスト会議論文集 Transkulturalitaet 297頁~302頁に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2012年度は研究図書の購入と文献解析をすすめ、口頭発表を2回と講演を1回積極的に行なった。特に海外における研究発表が2回となり、事前の準備に多くの時間をかけることとなった。ザクセン喜劇の主要作品のうち、ゴットシェート夫人の『身分違いの結婚』(1743)、レッシングの『若い学者』(1747)、『老嬢』(1748)、『女嫌い』(1748)を中心に作品の喜劇性や諷刺性と上演記録を調べた。 ノイバー劇団の活動と上演レパートリーについて、昨年収集した資料から解析をすすめてみた。さらに、ノイバーの劇『ドイツの序幕』(1737)について精読して、当時の演劇改革におけるノイバー座の演劇綱領を明らかにした。ノイバー起草の喜劇『羊飼いの祝祭あるいは秋の友人』(1753)については、原書の読破と解析を昨年から継続してすすめているが、予想以上に大作であり、最後まで分析するにはいま少し時間が必要である。 北京の学会で水が原因で胃腸を壊したり、帰国後過労から体調を崩して治療に専念した時期があった。そのため、ノイバー作の劇作品やクリューガー作『候補者あるいは官吏に至る手段』(1748)に関する解析作業が一時中断してしまった。2013年度にノイバー夫人の劇作品と演劇改革について日本独文学会全国学会で口頭発表をすることが決まっており、鋭意取り組んでいる。 カロリーネ・ノイバーの劇作家としての活動と作品は演劇史において解明が待たれる分野であるが、ドイツでもまだあまり研究がなされてこなかったので、是非研究を前進させたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2012年度で解析できなかったクリューガー作『候補者あるいは官吏にいたる手段』(1748)やノイバー夫人作『羊飼いの祝祭あるいは秋の友人』(1753)をザクセン喜劇の中に位置付け、演劇改革の試みとその後における劇作の傾向について比較検討したい。ノイバー座に出入りした代表的俳優についても、経歴と得意レパートリーを明らかにする。 諷刺を得意とするザクセン喜劇の特性を確かめるために、ハンブルクのボルケンシュタイン作『ボーケスボイテル』(1741)とC.F.ヴァイセ作『尺には尺を』、C.F.ゲラート作『優しい姉妹』(1745)等と比較したい。 ザクセン喜劇の個々の作家研究もまだあまりなされておらず、その中でもクヴィストルプという劇作家研究と彼の諷刺類型喜劇『心気症の男』、『山羊裁判』そして『牡蠣』をまとめて解析し、論文を日本の学術誌やドイツのレッシング・アカデミー等に投稿したいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究に必要なドイツ演劇関係の図書を2万円程度あてて購入したい。文献を整理、読破した上で、これまでの研究成果を論文にして学会誌に投稿したい。2013年5月開催の日本独文学会全国大会(東京)で口頭発表をすることが決まっており、そのための旅費として3万円をあてることにしている。最終的な研究報告書の製本費として5万円を予定している。
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