2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23520389
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
阿尾 安泰 九州大学, 言語文化研究科(研究院), 教授 (10202459)
|
Keywords | 18世紀 / フランス / ジュネーヴ / ルソー / 演劇 / ティソ / パリ / フーコー |
Research Abstract |
ティソの文献および資料収集はインターネットも活用する中で、順調に収集が可能となった。またそうした研究を背後から支える医学史的な文献も、川喜田、フーコー、アッカークネヒトなどの著作を中心として集め、読解することができた。 研究発表については、2012年秋に神戸大学で開催された日本フランス語フランス文学会秋季大会において、ルソーに関するシンポジウムを企画し、司会を務めた。さらに、その後、日本フランス語フランス文学会東北支部大会において、ルソーに関するシンポジウムで発表を行った。 2011年においては、学務上の都合で、国際学会出席のみで、海外資料収集はできなかった。そこで、2012年においては、海外資料収集のため、ジュネーヴ(スイス)とパリ(フランス)に赴くこととなった。ジュネーヴでは、ルソー生誕300年ということもあり、様々な企画があり、それを見学することができた。資料としては、最近注目を集めているルソーの執筆した『化学教程』の草稿を、ジュネーブ大学図書館古文書部門で閲覧することができた。また同じくジュネーヴの市立古文書館において18世紀当時の古文書を閲覧、撮影することができた。パリにおいては、フランス国立図書館でルソー、ティソに関する文献の収集を行った。またパリのアルスナル図書館においては、18世紀当時の古文書の閲覧を行い、そのころの状況への理解を深めた。さらに、ジュネーヴ、パリ両地区においては、貴重な文献を医学、政治、演劇などの様々な分野のものを購入することができた。以上のような状況の中から、ルソー読解の新しい形を試みる論文「18世紀、語られるもの、語られないもの」が生まれた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
医学関係の文献が順調に集まり、また医学史関係の文献もかなり読了が進んでいる。特に、18世紀当時の医学と文学の関係を論じた画期的な研究であるスイスのWengerの著作が入手できたことは大きい。医学、文学、演劇を結ぶ線が少しずつ見えてきている。またルソーの『化学教程』の重要性が明確になってきたことも研究の進展に大きな影響を及ぼしている。前の時代とは異なり、科学的な明晰性をあらたに志向しようとする「化学」は、その根拠をコンディヤックが主導する言語的なモデルに求めていた。一方で、この時代においては、言語のもつ情動喚起力についても人々の関心を引いていた。言語にはこうした2面性があり、ルソーにおいても「化学」に向かう明晰性と「演劇」に向かう情動性を言語が結びつけている。こうした枠組みをティソの中にも見出していきたいと考えている。 研究発表にかんしては、日本フランス語フランス文学会秋季大会でのシンポジウムを企画するなかで、発表者たちとの接触を通じて大きな刺激を受けることができた。それを踏まえた上で、日本フランス語フランス文学会東北支部での講演会において新たな見解を展開することができた。 また資料収集の面でも、ジュネーヴにおいては図書館の古文書部門において、ルソーの『化学教程』の草稿を閲覧することができ、数々の問題点を確認することができた。『化学教程』以外にも、ルソーの草稿を閲覧することができた。市立古文書においても重要な歴史文書を閲覧することができただけでなく、撮影もすることができた。パリにおいても国立図書館、アルスナル図書館で重要な資料を閲覧することができ、有益であったと思われる。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまで大量の収集してきた資料、文献を読解整理して、論点をまとめていく。またまだ収集可能であるような資料は、海外の図書館等も含めて、請求しながら、集めていく。そうした中で目指すことは、演劇モデルが言語という道具を用いることで、様々な領域において大きな効果をあげていることを明確な形で示せるようにすることである。特に、ルソーとティソという、多方面において大きな成果をあげている著作家において、具体的な形で提示できるように努める。 そして、そうしたまとめ作業については、できれば2013年秋に大分で開催予定の日本フランス語フランス文学会秋季大会において、ワークショップの形態で発表したいと考えている。もしそれが準備出来ない場合は、その大会における18世紀フランス研究会での発表を予定している。さらに18世紀研究者が多数いる東京において、打ち合わせないし、研究会発表も予定している。 以上のような作業を踏まえながら、最終的な段階として、報告書の作成を予定している。すでに発表した論文、口頭発表などの成果も反映しながら、まとめたものを作成したいと思っている。そして報告書はできれば、デジタルな形も作成し、ネット上で閲覧可能なものにしたいと考えている。さらに、まとめ作業が進行していくなかで、補助資料として作成されていくものなども、たとえば医学人名データベースなどは現在よりもさらに充実した形にして、ネット上で公開したいと思っている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
引き続き、ルソー、ティソなどを中心とした18世紀研究文献資料を収集、購入につとめていく。ただ最終年度ということもあり、分野を演劇、文学、哲学、医学、化学などの領域に集中していく。なお海外の図書館にも複製依頼が可能なものは、ルソーの草稿などを中心として、請求していきたいと思っている。 また研究活動の面で言えば、ワークショップ、研究会発表などの企画で、東京等にいる研究者たちと打ち合わせ作業、情報交換に努めたいと思っている。また東京での資料収集も予定している。特に2013年はディドロ生誕300年であるので、ルソーにも多大の影響を与えたこの哲学者に関するシンポジウムにも参加したいと考えている。また秋には大分で開催される日本フランス語フランス文学会秋季大会に参加してワークショップを開催する予定である。 最終年度であるために、まとめ作業にかなりの労力と時間がかかるものと予想される。少しずつ、資料文献データを整理していく。整理のためのパソコン・ソフトを選定し、それをもとにして、この研究に対応した整理システムの構築する。そのための作業の必要なことを予想している。そうした基礎作業のもとに、最終形態である報告書が作成される。報告書については、デジタルな形でのネット上での公開も考えているが、やはり印刷された冊子形態も必要だと思われるので、そのための印刷費用も考えている。報告書には、余裕があれば付録として、研究作業の過程で作成されていった人名などについての資料を付けることも想定している。
|