2011 Fiscal Year Research-status Report
ヨーロッパ文学における叙事詩的叙述技法の展開に関する比較文学論的研究
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23520396
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Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
佐野 好則 国際基督教大学, 教養学部, 准教授 (50295458)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 西洋古典学 / ホメーロス / 『イーリアス』 / 『オデュッセイア』 / 叙述技法 / 叙事詩 / ヨーロッパ文学 / 神話 |
Research Abstract |
本研究初年度にあたる今年度は、ホメーロス叙事詩の文献学的基礎作業の一環として、従来の代表的な研究方法に関する最近の文献調査を実施した。この作業に必要な参考文献を学術研究助成基金助成金により購入した。その成果の一部は M. L. West, The Making of the Iliad の書評として『西洋古典学研究』第60号に掲載された。この研究成果の意義は、あまり顧みられることのなくなった分析論の視点を、現在の統一論的な前提の中で活用する M. L. West の注目すべき方法論的提唱を批判的に紹介した点にある。本研究のもう一つの柱となる、叙事詩的叙述技法のヨーロッパ文学における歴史的展開の検討に関して、人間の技術文明の進展に関するギリシア悲劇および関連諸テクストにおける叙述技法の比較検討を実施した。その作業の中で、旧約聖書創世記の記述をも比較対象として取り上げた。この作業の成果の一部は、研究論文「技術と人間の問題をめぐって─西洋古典と聖書の視角から─」として『ペディラヴィウム通信』第34号に掲載された。この研究成果の意義は、人間の技術的進展に関する様々なテクストの叙述を構成する要素を比較することにより、それぞれのテクストの特徴を明らかにし、互いの影響関係および文化的背景との関連についての研究課題を指摘した点にある。 研究代表者は8月末よりオックスフォード大学コーパスクリスティー・コレッジに移り集中的に本研究の作業を続行した。オックスフォードにおける滞在費の一部として学術研究助成基金助成金を用いた。オックスフォード大学所属の連携研究者であるM・デイヴィーズ博士およびS・ハリソン教授と定期的に研究会議を開催し本研究の重点課題を設定し、オックスフォード大学図書館所蔵の文献を用いて情報の収集および分析の作業を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の二つの柱であるホメーロス叙事詩における叙事詩的叙述技法の検討と叙事詩的叙述技法の歴史的展開の両方の分野において中間的研究成果を研究雑誌に掲載発表することができた。またオックスフォード大学コーパスクリスティー・コレッジにおける在外研究において、連携研究者であるM・デイヴィーズ博士およびS・ハリソン教授との研究会議により、本研究の重点課題を具体的に設定することができたため、次年度以後ホメーロス叙事詩における叙事詩的叙述技法の検討および叙事詩的叙述技法の歴史的展開の両分野において、具体的に実証的研究作業を進める基盤を築くことができたと評価することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の第二年目においては、4月より8月までオックスフォード大学コーパスクリスティ・コレッジにおいて在外研究を続ける。ホメーロス叙事詩におけるヘーラクレース神話の箇所についての従来の研究成果を調査し、叙事詩的叙述技法に着目する新たな観点から分析を進める。また叙事詩的叙述技法の歴史的展開の分野については、牧歌の伝統における叙事詩的叙述技法の調査および絵画における神話の描写技法との比較の作業を進める。本研究の連携研究者であるM・デイヴィーズ博士およびS・ハリソン教授との研究会議を定期的に開催する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
4月より8月までオックスフォードに滞在する費用の一部として学術研究助成基金助成金を用いる。また9月に研究代表者が帰国後に所属大学において本研究を続けるために必要となる文献を学術研究助成基金助成金により購入する。 翌年度(2013年度)以後、本研究の最終的研究成果の発表を行う。そのために必要となる費用については、翌年度の学術研究助成基金助成金により支出する予定である。
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