2012 Fiscal Year Research-status Report
ヨーロッパ文学における叙事詩的叙述技法の展開に関する比較文学論的研究
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23520396
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Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
佐野 好則 国際基督教大学, 教養学部, 准教授 (50295458)
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Keywords | 西洋古典学 / ヨーロッパ文学 / 叙事詩 / ホメーロス / ウェルギリウス / ミルトン / 叙述技法 / 修辞学 |
Research Abstract |
平成24年度の前半期間に研究代表者はオックスフォード大学の文献資料を活用し,またオックスフォード大学所属の研究協力者と定期的に研究会議を実施しつつ,集中的に当研究を遂行した。 本研究の二つの領域のうち,ホメーロス叙事詩における叙述技法の解明に関しては,代表的なホメーロス叙事詩研究法を調査検討 し,中間的な成果として初期叙事詩の神話叙述に関する新刊書の書評を公表した。この基礎的な作業に基づいて,『イーリアス』と『オデュッセイア』における登場人物による物語について,最終的な成果の公表に向けて調査を続けた。この領域の調査は,ホメーロス叙事詩における登場人物による物語と叙事詩のメインプロットとが従来の認識よりも密接に関連づけられていることを示し,作品構想上の特徴を具体的に明らかにする意義がある。 本研究のもう一つの領域である比較文学論的検討に関しては,叙事詩的叙述技法の悲劇および歴史記述への影響の調査の中間的成果としてアイスキュロスとヘロドトスにおけるペルシャ帝国の叙述に関する研究論文を公表し,ソポクレース『アンティゴネー』に関する講演を行った。この講演の内容を研究論文として出版する作業を進めている。さらにこの領域の調査の最終的な成果としてプラトンの正義論についての研究論文およびミルトンの牧歌哀悼詩に関する研究論文を公表するための作業を続けている。この領域の調査には古代ギリシア叙事詩に特徴的に見出される叙述技法がヨーロッパ文学の重要な規範となったことを実証的に明らかにする意義がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はその前半期間にオックスフォード大学において集中的に研究を進めることができたため,本研究の二つの主要研究領域のうち,ホメーロス叙事詩における叙述技法の調査検討に関しては,その中間的な成果として一本の書評を公表することができたこと,そして最終的な研究成果の公表へ向けての作業も順調に進んだこと,またもう一つの主要研究領域である叙事詩的叙述技法の影響に着目した比較文学論的検討においても,その中間的な成果として一本の研究論文を公表し,一本の口頭発表を行い,さらに三本の研究論文の公表へ向けての作業に入っていることから,本研究全体としては,おおむね順調に進展していると判断することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年度となる平成25年度には,ホメーロス叙事詩における叙事詩的叙述技法の解明の観点から,特に登場人物が語る物語に用いられる諸叙述技法を解明し,その成果を研究書としてまとめること,そしてその研究書を可及的速やかに出版することを目指す。また比較文学論的研究の領域においては,悲劇『アンティゴネー』に関する研究論文とプラトン『国家』の正義論の背景についての論及論文とミルトンの哀悼詩についての研究論文を公表することを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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