2013 Fiscal Year Annual Research Report
ヨーロッパ文学における叙事詩的叙述技法の展開に関する比較文学論的研究
Project/Area Number |
23520396
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Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
佐野 好則 国際基督教大学, 教養学部, 上級准教授 (50295458)
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Keywords | 叙事詩 / 叙述技法 / 比較文学 / ホメーロス / ウェルギリウス / ミルトン |
Research Abstract |
本研究の最終年度に当たる本年度においては、本研究の柱となる2分野のうち、叙事詩的叙述技法の比較文学的研究についての研究成果を公表するために2つの研究論文を完成させることが主な作業となった。1つ目の論文「ミルトンの『リシダス』『ダモン葬送詩』におけるパストラルの伝統」は叙事詩の韻律ヘクサメトロスを用いたパストラル詩の展開におけるものであり、ミルトンのパストラル詩におけるテオクリトスおよびウェルギリウスのパストラル詩の翻案の技法を取り上げ、特に牧歌的情景における哀悼の叙述の展開に注目して論じた。もう1つの論文"First Stasimon of Sophocles' Antigone: Comparison with Texts on Cultural Progress"では、ソポクレスの悲劇『アンティゴネー』の合唱隊歌第一スタシモンを、ヘシオドスの叙事詩にあるプロメテウス神話や人間の諸活動の列挙とは対比的に紀元前5世紀に流布した文明進展史的諸文献を比較し、その中での『アンティゴネー』第一スタシモンの特徴を論じた。これらの論文作成に必要な文献のうち、国内で入手可能なものは入手し、それ以外のものは8月にエディンバラ大学およびオックスフォード大学に研究旅行を実施して複写・収集を行った。またそれらの研究機関に所属する研究協力者D. Cairns教授、S. Harrison教授、M. Davies博士との研究会議を実施し、論文作成に向けてのアドバイスを得た。他方ホメーロス叙事詩における叙事詩的叙述技法の基礎的研究を進め、登場人物による物語に関する研究書の出版に向けての作業を進めた。
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