2011 Fiscal Year Research-status Report
フランス15・16世紀の愚者演劇にみる聖俗超越への志向性を巡る知の歴史的総合研究
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23520399
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
川那部 和恵 東洋大学, 法学部, 教授 (70332765)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 仏文学 / 中世演劇 / 聖と俗 / 愚者 / ソティ / 世俗劇 / ファルス |
Research Abstract |
本課題の目的は、フランス15~16世紀の世俗劇に登場してその舞台を中心的に牽引する「愚者」ないし道化的人物たちの「知」の側面に注目し、そのありようが中世末・ルネサンス期の思想・文化的な転換の動きとどう関わっているのかを、聖と俗の関係性の視点から捉え直すことにある。具体的には、かれらの知的営為における聖と俗の葛藤が結果としてもたらしうる新たな展望の可能性を追究し、このビジョンの特質と時代的意義を、道化の言説の分析と歴史・文化・社会的背景の総合的な考証と検討をとおして探っていく。 以上の構想に基づく平成23年度の計画は、初年度のステップとして研究の基盤部分にあたるコーパスを作ることであった。作業はほぼ予定通り進み、当該の人物が登場する夥しいテキスト(ソティ、ファルス、滑稽説教、モラリテ、他)の整理と、広く関連の研究書や論文等も参照しながらの原典の読み直しとを、おおむね果たすことができた。その中で、これまで見落としていた新たな発見も多々えられたが、特に、ソティとエラスムスの『痴愚神礼讃』の間に確認されたレトリック上の密接な関連性は、今後の研究を進める上で重要な論点となるべく契機を孕んでいるものと目される。以上の結果は、つづく次年度以降の研究の基盤資料として常時参照、発展させられていくものとなるが、一部、当該年度に刊行した自著『ファルスの世界 一五~一六世紀フランスにおける「陽気な組合」の世俗劇』(渓水社)においても言及した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、テキスト研究を目的とする当該年度の予定はほぼ達成された。
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Strategy for Future Research Activity |
研究2年目は、視線をテキストの外に移し、前年度のテキスト分析でえられた成果を視野に入れつつ、演劇道化の超越志向的な知のありようがどのようにして形成されたのかを、聖と俗の歴史の中に探る。具体的には、神と道化の関係性を歴史的に洗い出すことを目標に、その認識と表現の歴史をたどる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費500,000 プリンター、記録メディア、図書旅費260,000 フランス(資料収集)人件費20,000 論文の語学チェックその他20,000 コピーカード
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Research Products
(2 results)