2012 Fiscal Year Research-status Report
危機の時代の文化多元主義 ー 雑誌『ドキュマン』とバタイユの野心
Project/Area Number |
23520400
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
酒井 健 法政大学, 文学部, 教授 (70205706)
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Keywords | バタイユ / 『ドキュマン』 / 両次大戦間 / フランス現代思想 / 民族誌学 / 美学 / シュルレアリスム / 20世紀哲学 |
Research Abstract |
本年度はジョルジュ・バタイユ(1897-1962)の没後50年にあたり、それに関係するシンポジウムが国外と国内において開かれた。私自身も本務校の法政大学において公開シンポジウムを企画し開催した。具体的に報告すると、2012年6月3日に東京大学で開催された日本フランス語・フランス文学会のワークショップ「バタイユ没後50年」においては、5名の発表者の1人として「異種混淆の賭博台ー『ドキュマン』をめぐって」と題する発表を行い、その発表原稿を『週刊読書人』2012年8月10日号に上梓した。また6月6日には、バタイユ編集『ニーチェ覚書』の邦訳本を「ちくま学芸文庫」より出版した。9月1日にはネット上のフランス語教育システム「ショコラ」のインタビューに応えてバタイユの魅力について語った。同月14日にはフランスのカン大学主催のシンポジウム「バタイユ没後50年ー《社会学研究会》」でバタイユの1930年代後半の活動を『ドキュマン』(1929-31)に立ち返りながら発表をおこなった。12月1日と2日の両日には法政大学・言語文化センター主催の公開シンポジウム「欲望と表現 バタイユ没後50年ーポストバタイユ思想の展開」を企画し、8人の発表者の1人に加わって、日本におけるバタイユ受容に関して発表をおこなった。さらに8人の発表原稿を同センターの紀要『言語と文化』第10号別冊(2013年3月)に掲載し、広く世に問うた。また同誌第10号(2013年3月)には論文「聖なるものの行方ー社会学研究会とそれ以後のバタイユ」を上梓した。このようにバタイユをめぐる一年をたいへん充実したかたちで送ることができた。雑誌『ドキュマン』のバタイユの思想をそれ以後のバタイユの活動から捉え直すことができたばかりか、さらに日本人のバタイユ受容を確認できて、たいへん有意義な一年であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
バタイユ研究において記念すべき年「バタイユ没後50年」に日本とフランスにおいて研究の成果を披瀝でき、また他の研究者と活動をともにし、研究成果を活字にして公刊できたことはたいへん意義深かった。とくに本務校においておこなった公開シンポジウム「欲望と表現」はバタイユの思想をその後の思想家たちとの関係で読み直す新たな試みであり、招待講師の熱意と実力の溢れる発表に恵まれ、さらにそれらを紀要に掲載して記録に残せたことは当初の計画をはるかに超える収穫であった。
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Strategy for Future Research Activity |
2013年度は締めくくりの年であり、バタイユと『ドキュマン』の関係をより広い視野で検討してみたい。すなわち図像と思想の新たなつながりを模索したバタイユの試みを両次大戦間という西欧の危機と不安の時代に照らして捉え直してみたい。1930年代のフランスにおけるドイツ思想(ヘーゲル、ニーチェ、ハイデガー、ヤスパース等)の受容を検討し、またピカソなどの前衛芸術の進展にも眼を向け、さらに政治と社会の新たな、そして深刻な展開をみせた西欧に関係付けて論じてみたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国外とくにフランスにおける資料収集、発表準備と発表渡航費、国内の研究者との打ち合わせと発表媒体の構築のために研究費を使用する。また関係書籍の購入と研究を促進するための備品を購入するために研究費を使用する。
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Research Products
(6 results)